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虐性インペリアリズム
帰りが遅い…。アパートの一室で日向はイライラしながら、3本目のビールを煽った。温くなった液体が痺れた舌を流れ、喉元を過ぎていく。不味い。こんなに不味いなら捨ててしまった方がマシだ。だが体を動かすのもかったるく、日向はただ手を動かし、チビチビとそれを胃に流し込んでいた。


狛枝の帰りが遅い。


「………。何でこんなに遅いんだよ…」
呟きは溜息と共に天井に消える。今の時刻は朝の5時を回っていた。日向は重い腕で、カーテンを引いた。そこから見える暗い空は時間が早いのか、陽が昇る気配すらない。しかもしとしとと冷たい雨が降り続いている鬱陶しい天気だった。暖房はつけていなかったが、内外の温度差はあるらしく窓ガラスには結露が浮き、ダラダラと雫を零している。
今日は25日、クリスマスだ。もちろんその前日は24日で、クリスマス・イブである。一般的に愛する者同士が仲良く過ごすであろうこの日、日向の恋人である狛枝は姿を見せなかった。何で、どうして…。日向を慕って、いつでも傍にいてくれた狛枝がどこにもいない。
「こまえだ…」
ぶつけようのない苛立ちに、空になったビール缶を片手でグシャリと潰し、投げ捨てる。ガランと空虚な音を立て、缶は無造作に転がった。狛枝、狛枝、狛枝…。日向はグシャグシャと乱暴に髪を掻き毟った。もう何も考えたくないのに、彼の優しい笑顔が脳裏にいくつも浮かぶ。徹夜でずっと待ち続けていたからだろうか、日向の体は倦怠感に塗れ、熱で火照る頭とは逆に足先は氷のように冷え切っている。辺りを見回すと、冷蔵庫から出したビールは全て飲み切ってしまったようだ。日向はダランと力なく部屋の壁に身を預けた。


……
………

日向は恋人の狛枝と半同棲生活を送っている。狛枝とは大学の学部が同じだ。研究室の所属は別だったので、最初は顔見知り程度だったが、共通の友人である苗木繋がりで何度か話すようになった。ハッキリ言って、第一印象は良くなかった。苗木には懐いているようだったが、興味のない人間(日向も含まれる)にはとことん冷たいタイプらしい。あまり関わっても得にはならないと、日向は狛枝を完全に見下していた。

しかしある夜にその関係は一変した。研究室で自慰行為をしていた狛枝を目撃し、日向はそれをネタに脅迫したのだ。最近セックスをしていなかったから。最大の理由はそれだったが、無理矢理抱いた狛枝の味は今まで味わったどの女よりも甘く美味だった。大学でレイプという状況にも興奮したし、何より誘うように淫らに喘ぐ狛枝は壮絶に色っぽかった。後で聞いたら、あれが初めてのセックスだったという。
1度だけの情事と割り切って手を出したのも最初だけで、写真を餌に2度3度と無理矢理体を重ねた。とにかく歪む泣き顔が最高だった。その顔を見ていると、耐えがたい劣情をもよおす。抵抗する彼を力任せに押さえつけて、幾度となくその内側を貫き、犯しぬいた。狛枝の体は極上だ。不思議なことに、いくら抱いても飽きることがない。快楽に負けて開かれた体は、日向の心と体を捉えて離さなかった。狛枝は絶望的な仕打ちに打ちひしがれていたが、日向はとても満足していた。
しかし日向の予想とは裏腹に、体だけの関係はさほど長く続かなかった。狛枝と膝を突き合わせて話をするようになって、日向は彼の本質を初めて知ることになる。やがて狛枝が苗木に片想いをしているのを腹立たしく感じた頃、これは恋だと初めて自覚した。
「…狛枝」
好きだ。そう告白した時の狛枝の顔が、とても迷惑そうにしていたのを今でも覚えている。何度も想いを告げる度に、しつこいよと不機嫌そうに言われ、足早に逃げて行ってしまう彼に、日向は必死に縋った。結局そのしつこさに狛枝の方が折れてしまったのだが。めでたく恋人同士になった2人だが、関係は大きく変わらなかった。
相変わらず狛枝は素っ気なかったが、何だかんだ言いつつ、彼は日向の手の届く所にいてくれた。普段の狛枝は以前と変わらず日向を毛嫌いして離れようとするのに、セックスをする時だけ餌を乞う犬のように従順で素直なのだ。そのギャップが堪らなくて、日向はどんどん狛枝に溺れていった。


そして現在に至るのだが、その楽しい恋人生活にも影が差し始めた。ここ1週間、狛枝の帰りが遅くなることが多い。日付を跨ぐ日が増え、挙句に今日は朝まで帰ってきていない。遅い日が2、3日続いた時にはさすがに日向も気分が悪くなってきた。どこに行ってるのかと狛枝に聞いても、曖昧に笑ってお茶を濁される。帰りを心配して、駅まで迎えに行くぞと言っても、ゴミムシなんかに気を遣わないでと軽くかわされる。
成人した大人なのだから、日向以外の付き合いもあるだろう。そう思って納得していたが、最近はそれも疑問に思い始めた。ハッキリ言って、狛枝は友達が少ない。大学同期の人間にそれとなく聞いてみたのだが、狛枝は特に誰とも連絡を取っていないらしかった。1番仲の良い苗木でさえもだ。地元を離れていて、小学校や中学の友達とは疎遠だと本人が話していた。だったら、誰と会ってるんだという話になる。日向が気になるのはそこだ。
「5時15分か…。あいつ、いつになったら帰ってくるんだ?」
実は今日この日を、日向は楽しみにしていた。折角恋人同士になれたんだから、クリスマスは一緒に過ごしたい。彼を喜ばせたくて、プレゼントも用意した。優雅な生活を送る彼に大したもてなしは出来ないだろうが、ただ傍に狛枝がいてくれるだけで良かった。
ショックだった。最後の最後に諦めたように俯いて、告白を受け入れた狛枝の赤い顔を思い出す。想いが通じたはずの狛枝が、自分に何も話してくれないなんて…。裏切られた。悲しさよりも怒りが湧いてきて、日向はそれを抑えるように手の甲に爪を立てた。もしかしたら…、浮気かもしれない。知らない男相手に狛枝が淫らに腰を振っている姿が頭に浮かんで、日向は気が狂ってしまいそうだった。

「ただいま…」
玄関から聞こえる声に日向はハッと顔を上げた。気を失っていたようだが、時計の針は数分しか動いていない。パタパタと足音がして部屋のドアが開かれる。そこにはボーっとした表情の狛枝が立っていた。
「狛枝…っ! どこ行ってたんだよ!」
「……日向クン…、起きてたんだ。………。どこって…。日向クンが気にすることじゃないよ」
冷たくそう言って、うっすら笑う狛枝。しかし日向にはその仕草が行為後の倦怠感を彷彿とさせた。イライラが胃から全身に広がって、拳を固く握りしめる。
「おかしいだろ…! 気にすることじゃない用事で、朝まで帰ってこないのか? 心配したんだぞ、俺。…本当はどこ行ってたんだ!?」
「日向クン、顔が怖いよ…? あはっ、安心してよ。キミが心配するようなことは何も、」
「っ何もないなら言えよ!! 遅くまで何やってたんだよ。俺にも言えないのか!?」
日向は思わず立ち上がって、狛枝の肩を揺さぶった。男なのに美しいという形容詞がピッタリな整った顔立ちが、悲壮の色に染まる。何か言いたげに唇を動かした狛枝だったが、灰色の瞳は日向から逃げるように逸らされる。そして小さく「それは、言えない」と呟いた。視界が真っ赤に染まるような錯覚がしたが、狛枝に手を上げる訳にもいかず、日向は息を大きく吐いて彼から離れた。
「………。狛枝、浮気してんのか?」
「? いきなり何言ってるのかな。ボクは日向クンが、」
「うるさい!! 俺に内緒にまでして行きたい場所があんだろ!?」
「それは違うよ…! 誤解だって、ボクは」
引き攣った声を上げて、狛枝は泣きそうに顔を歪めた。行き先を言わないクセに、誤解だと弁明する。頑なに真実を話さないその態度に、日向は余計に腹が立った。ますます頭に血が昇る。
「相手は誰だ…? 大学の奴か? それとも援交目的の親父? 今日だって男相手にケツ穴晒してたんじゃないのか!? お前、淫乱だもんな。チンコないと生きてけないもんな」
「……っやめ…てよ」
「グジュグジュのケツ穴にチンコ突っ込まれて、涎垂らして悦んでたんだろ! 誰彼構わず足広げて男誘うなんてお前らしいよ。それにまんまと引っ掛かった俺もホント馬鹿だわ…、ははっ」
「っ、ひな、たクン…ボク……っくぅ…」
酒の力もあってか普段言えないような単語も、スラスラと口から飛び出ていく。ボロボロと涙を零して啜り泣く狛枝に、日向は下半身に熱が集まるのを感じた。妙に加虐心を煽る表情だ。めちゃくちゃにしてぶっ壊してみたい。そんな思いが心に芽生えてくる。日向は狛枝の腕を発作的に掴んだ。
「あ…、日向クン? 何…? 何、するの?」
「嘘吐きにはおしおきしないとな。これからお前の好きなことをすんだよ。光栄だろ?」
「ひっく、あ…、日向クン…」
「浮気してないか確かめてやるよ。結果はどっちにしろ、『さよなら』だけどな」
潤んだ瞳から涙が一筋流れる。その反応に日向は背筋をゾクゾクさせながら、狛枝を部屋へと引っ張り込む。なすがままによろよろと着いてきた狛枝を乱暴にベッドへと押し倒した。日向の股間はもう破裂寸前だった。



恋人になる前もなってからも、体を重ねるのは日向の部屋だった。大学生のカテゴリから外れない一般的な安アパートだ。面白みのない白い壁紙、ホームセンターで買った組み立て式のパイプベッド、引っ越しの際に友人から拝借したラック、無造作にハンガーに掛けられた私服が数着…。生活用品を溜め込み、睡眠を摂るだけの無機質な空間が、狛枝が来ることによって情欲に満たされた秘密の小部屋へと変貌する。
やめてと泣きながら抵抗するも、狛枝の手足の動きは弱々しい。コートを脱がせてその辺に放り投げ、シャツを引っ張り胸まで捲り上げる。逃げようとする狛枝をベッドに押し付けて、乱暴にパンツもズボンと共に引き下げた。それが10分前のこと。

「はふっ…、ふはぁっ!」
そして今。狛枝はベッドの上で素肌をさらけ出し、四つん這いの状態で大きな喘ぎと熱い吐息を漏らす。服を全部脱がせて、見せつけるような厭らしいポーズに日向は興奮する。部屋に灯した蛍光灯の光で、体中隅々まで見渡せるのだ。
「あ…っ、んっぅ…っんんっんぁあ! ひ、なたクンン…!」
涙声で喘ぐ狛枝の表情は既に快楽に浸食され、蕩け切っている。彼のアナルには、日向の右手の指が埋め込まれていた。いつもは徐々に馴らしていくが、日向は容赦しなかった。指の数は既に3本を越えており、それが狛枝の中をかき回す。
「…、ここは誰にも入れられてないみたいだな。でも何で、誤魔化すんだ?」
「……っ」
「言わないつもりか。やっぱりおしおきだな…。どこが良いんだよ、狛枝。口にして言ってみろ」
「そっ、そんなのっ、言えな…。はあぁぁっ!!」
意地悪そうな日向の問いかけに、荒く息を切らせた狛枝は顔を赤らめて恥ずかしそうな表情を浮かべる。その気持ちを表現しようと口を開くが、言葉は途切れ、狛枝は身体を大きくひくつかせながら喘いだ。
「言えないのか? 狛枝、ちゃんと言ってみろよ。『ボクのお尻が気持ち良いよ…』って」
「そっ…そんなことっ、言えな…んっ、くっはぁ」
止まることなく与えられる快楽を前に、狛枝はひたすらに吐息を零し、そして身体をビクビクさせる。羞恥心は人1倍あるのに、体は正直だ。
うねるような頭髪の隙間から見える潤んだ灰色の瞳、薄く筋肉の付いた華奢な背中、すんなりとした細い腰、引き締まった白い尻、うっすら汗を滲ませる見事な脚線美。ただただ美しかった。狛枝の肢体に視線を走らせた日向は短く息を吐いた。彼の肉体は、自分と同じ男なのに何もかもがまるで違う。男に愛されるための体とでも言うのだろうか。興味本位で手を出したあの大学での夜。初めてでも僅かな悦びを拾い、乱れに乱れていたのだ。
「言えなくないだろ。……じゃあ良く見えるように、こうしたらどうだ?」
そう言うと日向は狛枝の身体をひっくり返し、仰向けの状態にさせた。当然アナルには指を入れ込んだままの状態であり、全身に力の入らない狛枝は、日向のなすがままにされてしまう。
「いっ、いやだよっ! こっ、こんなのっ…、日向クン…、うっぁ、はふぁ」
自分の身体の前面が見られる体勢にさせられた狛枝の瞳に映ったのは、快楽に対して素直に反応する自身のペニスだった。誰かが触れた訳でもないのにペニスは大きくそそり立ち、今なお先走りが出ている。トロトロと零れるそれは狛枝自身を潤し、双球から尻へと流れ、日向の指すらも濡らしていった。
「狛枝……、ここが気持ち良いんだろ?」
「ちがぁっ…はふぁっ、んっ…はぁぁっ! あ、ぐ…」
再び日向の口からは、狛枝に対する意地悪な問いかけがなされる。同時にアナルに入れ込む指も、激しく出し入れを繰り返す。ジュクジュクと大きく響く水音に、狛枝はいやいやをするように頭を振った。内側を刺激しているだけなのに狛枝は身体のみならず、ペニスも大きくひくつかせている。
「お前のチンコ、触ってないのにすごい動いてるぞ…」
指が体内をかき回す度に狛枝のペニスは前後に震え、止め処なく溢れる先走りの液体を自分の腹部に垂らしていく。淫猥なその光景に日向のペニスもビクビクと震えた。既に痛いほどズボンを押し上げてきている。狛枝は目に涙を浮かべながら口を動かすが、そこから出てくるのは淫らな喘ぎ声だけだった。
「日向、クン…、ちがっ…こんなっ、の…んっ、はふぅ、ふぁっ!」
日向の言葉を前に、狛枝はそんなはずがないと主張したいのだろう。しかし今狛枝の目に映る自らの身体は、日向の言う通りに反応している。大きく足を開き、日向の指を積極的に受け入れているのだ。足の指先は痙攣を起こしているかのように、開いたり閉じたりしている。狛枝は快楽に対して素直な身体から目を背けた。
感じやすい体のクセに処女のような反応をする狛枝に、日向は興奮と憤りが入り混じった感情が湧いてきた。狛枝を虐めて、突き落とそうとしているのに、何故か自分の方が余裕がなくなっている。中々陥落しない狛枝を崩そうとグリグリとアナルの内側へ指を進めた。
「違わないだろ。お前のケツ、俺の指しっかり咥え込んでるし…」
「んっ、ふぁ…っく、んっ…んんっ」
「もっともっと弄って欲しいって、泣いてるみたいだぞ……。お前のここ」
日向は指の動きを止めることなく、またその口からも小さな笑いと共に、卑猥な言葉を狛枝に投げかける。狛枝はそれを必死になって聞こえない振りをするものの、そう意識することが余計に日向の言葉を耳に入り込ませ、恥ずかしさを助長させてしまう。せめぎ合う羞恥心と快楽が混じり、狛枝を絶頂へと向かわせていった。
「んんっ…ふんっ、んんんっ」
それはやがて狛枝の声にも現れ出し、今まで喘ぎを上げていた口を完全に閉じてしまった。投げ出された右手はシーツを力なく握り締め、カタカタと震えている。身体の奥からやってくる射精感を我慢するため、狛枝は全身を走る快楽を抑えようと歯を食い縛っていた。
「もうイくのか? ケツ穴弄られて、チンコから出す?」
「んっ…ふっ、ん…んんっ」
日向が浴びせる声を前に、狛枝は顔を左右に振って否定をする。だがその反応とは裏腹に、やはり身体は素直に返事をしてしまう。アナルの締め付けは今までにないほどに強く、日向の指を捕らえて離さない。指は狛枝の体液で完全にふやけてしまっている。先走りの液体でグチュグチュになった狛枝のペニスは、小刻みにプルプルと震えていた。
「……出したいんだろ? 狛枝。溜まったもん、チンコからいっぱい」
「んっ、んっ…んんんっ」
何度日向が問いかけても、狛枝は否定を続ける。イくだけならすぐにでも出したいというのが男の本音ではある。しかしタガが外れない狛枝は射精することに対し、抵抗を持っているらしい。未だかつてない恥ずかしさに襲われている今、どうしても射精をしたくない気持ちに駆られてしまうことを、何度も体を重ねていた日向は知っていた。
「まぁ…。しょうがない、か」
このままではいつまで経っても射精をしないと感じた日向は、痙攣する狛枝のペニスに自分の唇を当てる。狛枝のそれは日向とは違い、綺麗な薄い色をしていて、あまり毒々しくない。日向は迷うことなくペニスを口に含み、チロチロと舌の先を使って舐めた。足先から膝までを安心させるように撫で、徐々に舌を絡めていく。
「ん……、日向クン…、ふ……んんっ、んッ」
「……こ、ま、えだ……んぅ…、チュ…、ぢゅるる……」
それでも狛枝は落ちない。やがて日向はジュブジュブと音を響かせて、ペニスを愛撫するようになった。日向の唾液と混ざり合い、狛枝の先走りが唇から漏れてしまうが、それを掬うように舌で飲み込みながら、狛枝のペニスを十分に味わう。根元の双球を軽く揉んでいると、ビクンビクンッと口の中のペニスが揺れたのを感じて、日向は鈴口を強く吸った。
「んっ、ふあっぁ! やぁ、ひぁた、クン…やめ、」
「おっ…」
狛枝の全身が強い電流が流れたかのように、ビクビクと打ち震えた。さすがに狛枝もフェラチオの気持ち良さには敵わなかったのだ。日向はパッと狛枝のペニスから口を離した。その瞬間に抑え込んでいた快楽が一気に外に放出されていく。
「んぁぁぁぁぁぁぁっ!! はぁぁぁっ、ふはぁっ…、ふぁぁぁぁっ!!」
ペニスからは白い精液が勢い良く射出され、それは狛枝の胸元にまで飛び散っていく。限界を超えた射精感を我慢していたこともあって、その量はとても多い。狛枝のペニスはビクビクと大きく動きながら、止め処なく精液を散らした。
「すごいな。…ケツも、キュウキュウ締め付けてる…」
「はっ、ふうっ…はぁぁぁっ…。日向クン…、んっんっあ…」
射精に合わせるようにして、狛枝のアナルはその締め付けをこれまでにないほど強める。それは日向の指が、食いちぎられるのではないかと思うほどの力だった。乳首は触ってもいないのに、ツンと尖っている。戯れに空いている手で突っついてやると、狛枝は力の入らない鈍い動きで小さくもがいた。
「ふぅ…、どうだ? 最っ高に気持ち良かっただろ?」
日向は射精が収まると、狛枝のアナルから指を抜こうとする。キツくて中々抜けない指に日向は笑みを漏らした。
「んっ、う。はぁっ、ひなた、クン…、ふぅ…ふぁ…ふぁぁぁぁ」
狛枝は目を瞑って、快感に顔を歪ませていた。『ちゅぽん』という音と共に彼の身体は小さく跳ね、再び射精の余韻に浸っている。大量の精液を放出した身体はこれまでにない脱力感を与え、狛枝はいつまでも夢見心地でベッドに横たわっていた。全身を桃色に染め、狛枝は肩で短く息をする。目からは涙、口からは涎が滴り落ちるその顔はどこか虚ろだ。
「日向クン、早くっ、挿れてっ…はぁ、はぁ」
狛枝は大きく息を切らせながらベッドの上で足を開き、自分のアナルを目の前にいる日向に見せる。既に指で慣らされた部位は、まるで呼吸をしているかのようにひくついていた。
「入れるって、何をドコにだよ?」
その狛枝の姿と言葉を耳にすると、日向は顔をにやつかせて、狛枝のして欲しいことを解っていながら問いかける。本当は日向のペニスも限界まで勃起していたが、それを見せないように上から目線で狛枝を虐める。
「だからっ…日向クンのおちんちん、ボクのお尻に…早くっ…」
もう我慢の出来ない状態にまでなっていた狛枝は、恥ずかしげもなく言ってきた。顔を上気させ、だらしがなく涎を垂らし、日向を一心に見つめる様は色情狂いにしか見えない。日向の目に映る狛枝のアナルは延々とひくつきを繰り返し、それはまるで自分を誘いかけているようだった。
「俺のが欲しいのか?」
日向の問いかけに、狛枝は大きく頭を上下に振った。欲しくて欲しくて堪らないといった表情だ。日向はズボンを下ろし、パンツの中からペニスを引き摺り出した。灰色の瞳は日向の勃起したペニスを見て、その先に繰り広げられる情事を想像し、期待に満ちていた。狛枝のひくつくアナルに自身の大きくなったペニスを当てる。大量の血液が流れ続ける日向のペニスは激しく脈打っており、その感触がアナルを通じて全身に伝わっているのか、狛枝はピクンと体を痙攣させた。
「うん、それっ…日向クンのおちんちん、……早くっ…! ボクのお尻の中に入れて…」
狛枝は自分のアナルに触れる日向の熱い感覚を感じ取ると、再び恥ずかしげもなく返事を返す。快楽に支配されてしまったらしい狛枝は、腰を揺らして可愛らしくおねだりしてきた。日向はゴクリと生唾を飲み込むと、狛枝の言葉を聞き入れ、ピタピタとアナルに当てていた自分のペニスを小さな穴の中へと埋め込んでいく。
「んっ、はぁっ…すごいぞ、どんどん入ってく……」
「はぁぁっ……ボクの中、いっぱい…んっ、はぁっ!」
ズブズブと鈍い音を出しながら、日向のペニスは狛枝の中へと入り込んでいく。指で完全に解された狛枝のアナルは、放っておいても飲み込まれてしまいそうだった。何て、厭らしい体だ…。ヌルヌルと生温かい肉壁に日向は大きく息を吐く。
「奥まで入った…。動くぞ」
「んっ、ふぅっ…。んあぁぁっ!!」
狛枝は体をビクビクさせ、引き攣ったような悲鳴を上げた。悩ましげに目尻を下げて、真っ赤な舌をだらりと出している。気持ち良くて仕方がないのだろう。アナルへと完全にペニスを埋めこんだ日向は、すぐに自分の腰を前後に動かし始めた。指でぐずぐずに解していたお陰か、引っ掛かりもなく動きはスムーズだ。
「はぁっ…はぁっ…。う、く、……っ! 狛枝のここ、熱くて…」
「んぁぁっ! いっぱいっ、…日向クンの、おちんちん…! はふぁぁっ!」
日向のペニスは、狛枝のアナルの中を激しく出し入れを繰り返す。グチュグチュとぬめりを持つ液体の擦れ合い、淫猥な音を出していく。抜き差しをする度に肉が解れて、柔らかくなっていった。ペニスにピッタリと纏わりつく狛枝のアナルに、日向は恍惚の表情を浮かべた。
「はぁ…、気持ち良い…っ。狛枝の、すごく締め付けて…」
「ボクもっ…日向クンがっ…! 身体の中に入って…じんじんする、よぉ……、んぁっ!」
ギシギシと不安定な音を立てるベッドの上。狛枝の腰を強く掴み、日向は前立腺目掛けて激しくペニスを突き上げる。狛枝は声にならない叫び声を上げながら、僅かに腰を浮かせた。最奥へと届く度にくっと上がった爪先がシーツの海を蹴り、狛枝は甘い喘ぎを漏らす。液体の絡まりあう卑猥な音は、止まる気配を見せない。むしろその音は、時と共に激しさを増していった。
「狛枝のチンコも、感じてるんだ…。……はぁっ、はぁっ…」
「やっ、だ…そこ、触っちゃ……、いやぁ、んはぁっ!」
日向の手は、狛枝のペニスへと触れられる。大量の先走りと精液によって包まれた狛枝のペニスを、日向は優しく愛撫し始めた。前立腺を刺激する度に、鈴口より後から後から溢れてくる液体が日向の手首まで滴ってくる。
「狛枝、感じてるのか? ヌルヌルしたのがいっぱい出てるぞ…」
「はっ、いっちゃ、やだ…っくはぁっ! ああんっ」
狛枝のペニスに触れた手を上下に動かしてやると、狛枝は身体を大きく仰け反らせてきた。前後に与えられる快楽を前に、狛枝は既に性欲の虜だ。口からは熱い吐息と喘ぎを漏らし、ペニスからは止め処なく先走りを放出し、アナルも日向のことを強く締め付けて放さない。日向が手で触れていた狛枝のペニスは、張り裂けそうなほどに膨張し、震えているかのような動きを見せてきた。
「狛枝のチンコ、凄くヒクヒクしてるな…。もうイきそうか?」
「ボクっ……、もう、ダメっ、だよぉ…。我慢、できなっ…、ふぁっ!」
日向の言葉に合わせ、狛枝自身も限界が近いことを伝えてきた。グラインドさせるような過激な腰の動きで、日向のペニスを受け入れている狛枝は、赤い顔で短く呼吸を繰り返している。
「…まだ、ダメだっ…もっと、もっと善がってみせろよ…。狛枝……!」
射精寸前の狛枝に日向はそう言って、手に持ったペニスの根元を強く握り締める。すると抑え込まれてしまった射精感を前に、狛枝はガクガクと大きく震えた。悲鳴にも似た声を一瞬上げ、呂律の回らない声で返事を返してきた。
「はひっ! らっ、らめっ…日向クン…! ボクっ、おかひくなっちゃ…はぁぁぁっ!!」
「もう少し……、我慢しろよな…。はぁっ」
そう言って日向は自分の腰の動きを今までにないほど激しくさせ、狛枝のペニスを握り締める力も強くしていく。狛枝にキツく締め上げられ、日向のペニスには痛みにも似た刺激が走り抜けるが、もはやその感覚すらも快楽に感じてしまう。
「はぁんっ……、アッ…ああんっひ、ひな、たクンっ、ヤぁ…、きもちぃよぉおっ」
「そうか…、はーっ、……ん、それは何より、だ…っ」
「…んぁあっ、やめてぇ……! あふっ、ひぁたクン、ひぁっ、手……っ、離してぇ…おねが、ぃ…」
「はぁー…、ははっ! まだ、ダメだぞ、狛枝…。まだだ…! ほら、もっと啼けよ…!!」
「ひぁああっ! ヤぁアアんっんっ! 日向クンのっ、おちんちんが、ボクを、グリグリってぇええっ!」
開いた口からは止め処なく涎が流れていく。結合部分からはパンパンという皮膚がぶつかり合う音と、チャクチャクと体液が擦れ合う音が聞こえた。体が溶けるような熱さは、まるで1つの生き物になったかのようだ。
「…はや、くっ…イかせ、てぇ…。頭の中、変になっちゃ……、はひっ、はひっ」
狛枝は全身を大きくわななかせ、その身体はもう限界を超えているとすぐに解る。心を溶かす狛枝の懇願も、日向は冷たい思いでもって切って捨てる。これはおしおきだ。自分を捨てようとした狛枝への罰なのだ。日向は自分に大きな射精感が訪れるまでは、狛枝がイくことを絶対にさせなかった。力いっぱいに握り締める狛枝のペニスは充血し出し、今にも破裂してしまいそうな勢いだった。
「ら、めぇ…、はっ、はっ…だめぇぇ…。ゆるして、日、向クン……。イかせ、はふっ…てぇ…」
狛枝はもう視点が定まっていない。無心で日向の律動に合わせて腰を振るだけだ。射精を阻まれた今の状況から解放されたいその一心で。日向が絶頂へ達するのも後少しだった。乱れた狛枝のアナルにガンガンとペニスを突き刺して犯す。狛枝の妖艶な表情、下半身に響く掠れた声、白く美しい体…。全身全霊で日向を求めて喘ぐ様に、興奮もピークに達する。もう限界だった。日向の腰辺りにカッと燃えるような熱が集まっていく。
「はぁっ…っく、狛枝っ、イくッ…。っう!」
やがて狛枝のアナルに入れ込んだペニスから、ドクドクと大量の精液が吐き出されていく。それは日向の全身から力を奪い去っていき、握り締めていた狛枝のペニスからも手が離れていった。
「ふっ、んぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
その瞬間に、狛枝の閉じ込められていた快楽が体中を駆け巡り、勢いよく外に放出されていく。狛枝は全身をガクガクとさせながら、そそり立つペニスから白濁を撒き散らした。ドピュドピュとその勢いは止まらない。先走りと混じり合い、精液は結合部にまでダラダラと流れ落ちていった。
「狛枝…っく、…締め付けるなっ…。ん、痛いだろ……」
そして蜜を溢れさせながら、狛枝のアナルは激しく日向のペニスを締め付ける。それは全てを自分の中に出して欲しいという欲望にも感じられ、日向は自分の精液を搾り出されているような気分だった。
「はふぁっ……、日向クンの、精液…、いっぱい、出てる……。熱いのが…、いっぱい」
「うぁぁ…。狛…枝…っ。ん、」
「日向クン…。あふぁ、ふぁぁぁ…」
「………うぅ、………」
狛枝は精液が流れ込んでくる感触を、ビクビクと全身で感じ取っていた。日向も狛枝に何度となく締め付けられて、尿道に残っていた精液をペニスから搾り出す。頭の中は真っ白だった。今まで感じたことのない高揚感と脱力感に、日向は言葉が出ない。
「ふふっ、あは、……あははっあはははははははははっ!!」
「っ!?」
狛枝はその場で顔をボーっとさせたまま、不気味な笑みを零す。日向は狛枝の異常にペニスを抜こうとするが、アナルがぎゅうぎゅうと圧迫し、それを許さない。射精の快楽と体内に残る日向を感じ、狛枝はひたすらに笑い続けていた。


……
………

「で? 結局お前は何してたんだよ。俺に内緒で!」
日向は棘のある口調で狛枝を責めた。しかしその手は優しく狛枝の腰を抱き、向ける視線も穏やかだ。狛枝は安心したように日向に擦り寄り、日向の鎖骨に唇を近付け、吸いついた。ちゅっとリップ音の後に唇を離す。日向からは見えなかったが、そこには恐らくキスマークがあるのだろう。
漸く陽も登り始め、カーテンが引かれた窓からの光で互いの顔が良く見える。狛枝は申し訳なさそうに眉を下げた。
「ごめんね、日向クン。実はバイト行ってたんだ。ある伝手で飲み屋でね…。今日はイブでオールナイト営業だったから、朝帰りになっちゃった。……あ、決して如何わしい所じゃないからね! 疑うのなら今度そこへ連れていくよ」
「お前が、…バイト???」
状況が飲み込めない日向だったが、狛枝に悪気がなかったことは理解出来た。モジモジと顔を下に向ける狛枝の頭に日向は軽くキスを落とす。「怒らないから話してくれよ」と促すと狛枝は顔を真っ赤にして、口を開いた。
「今日クリスマスでしょ? 日向クンにプレゼント渡したくてさ…。でもお金がなかったから、キミに内緒で少しの間バイトをね」
「何でそこでバイトなのかが分からないぞ。お前、金持ちなんだろ?」
狛枝の返答に日向は眉を顰めた。付き合い始めてから、彼がどういう生活をしているのかを知ったが、自分が思ったよりもそれはとんでもないものだった。マンションの1フロア全てが彼の所有で、ホテルでもないのに専用のコンシェルジュまで付いていたのだ。欲しい物は何でも手に入れられる生活。大学で友達を作らないのは、それを知られたくないからと以前に狛枝から聞いたのだ。
「うーん、そのお金は両親の遺産だからね。他人じゃない…ボク自身が稼いだお金で、キミにプレゼントを買いたかったんだ」
「ただのバイトだったら、普通に言えば良いじゃないか」
「だって…、ビックリさせたかったんだよ! その方が日向クンも喜ぶと思ったから。でもバレちゃったね…」
狛枝は照れ臭そうに微笑んで、目を細める。言われてみればと考え、日向は「ああ」と頷いた。バイトをしていることが分かれば、その理由も自ずと判明してしまう。だから狛枝はあんなに隠そうと一生懸命だったのだ。日向だけを思い、バイトなんていう慣れないことまでした狛枝。世間知らずな彼はさぞ不自由な思いをしたことだろう。健気な狛枝に日向は胸がギュッと締め付けられた。
「狛枝…! ありがとう。その気持ちだけでも十分だ」
彼は日向を裏切っていなかった。クマを作ってまで自分のためにプレゼントを買おうと必死になっている恋人。それが堪らなく可愛くて、日向は狛枝を思いっ切り抱き締めた。狛枝も日向の背中に手を回し、ふわりと笑う。
「ごめんな、狛枝。俺疑ったりして…。本当に悪かった」
「もう、いいよ。日向クン…。ボクが秘密にしてたのがいけなかったんだよ。………。ねぇ、少し寝たらさ…。プレゼント買いに行くの、付き合ってくれない? 昨日はお店が閉まってて、買えなくて…」
朝帰りにもなれば、開いている店などない。狛枝は肝心な所で抜けていたようだ。狛枝の願いに日向は苦笑しながら、二つ返事で了解する。ふと窓の外を見ると、空からはチラチラと白い小さな光が降り注いでいた。
「……雪だ」
「え? ああ、ホントだ。どうりで寒いと思った…」
しばらくの間、日向と狛枝はふわふわと揺らめきながら落ちていく雪を眺めていた。ホワイトクリスマスになるかは分からなかったが、その勢いはだんだんと強まっているようだ。窓から忍び寄る冷気に狛枝はふるりと震える。すぐに日向は冷え始めた狛枝の体を擦り、腕の中へと収めた。日向の熱い体に抱かれ、狛枝は幸せそうに小さく溜息を吐く。日向の顔からも思わず笑みが零れた。
「…じゃあ、改めて。メリークリスマス、狛枝。……愛してる」
「ふふっ、メリークリスマス。日向クン。ボクも愛してるよ」
2人は見つめ合うとコツンと額をくっつけて、深い深いくちづけを交わした。

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