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きみはいいこ
「……ねぇ、もう1回…しよ?」
日向はその言葉にハッとし、落ちそうになる瞼に力を入れた。耳のすぐ傍…セクシーなハスキーボイスのした方を見れば、長い睫毛を瞬かせた中性的な美貌の男が裸で寝そべっている。ふわふわと柔らかそうな白い髪は激しい行為で流した汗に僅かに湿っていた。ぺったりと顔にくっついた前髪の隙間からモスグレイの瞳が物欲しそうにこちらを見ている。首元には点々と所有の印が残っており、さっきまで激しく求め合った情交のイメージを強く印象付けた。
「狛枝、今…何て、言った?」
問い返せば彼は「ん…、聞こえなかった?」と眉をハの字にして、鬱蒼と髪を掻き上げる。そんな簡単な動作でさえ、映画俳優のように一々決まるから内心悔しい。何も言わずに待っていると、彼はクスリと口元だけで微笑み、日向の頬を優しく撫でる。決して小さくない骨ばった白い手の感触に、改めて相手が同性なのだということを実感した。それでもなお 彼のことを変わらずに好きなのだから、自分は本当にこの男に恋をしているのだと日向は他人事のように思った。
頬を撫でる手が唇に移動し、ふにふにと楽しげに突っつく。遅れてシンメトリーの整った狛枝の顔が近付いてきて、日向は自然と目を閉じた。少しだけ涎が滲んだ唇が軽く触れて、しばらくしてから離れる。薄い桜色の唇から「はぁ…」と熱っぽく吐息が零れた。
「…日向クン、もう1回…セックスしよう?って言ったんだ」
今度こそハッキリ聞こえて、日向の瞼が完全に開く。それは2度3度と続けざまに抱けば、すぐに音を上げてしまう美しい恋人からの意外な言葉だった。


日向と狛枝は学部は違うが、同じ大学に通っている。左右田から誘われた新入生歓迎会で顔を合わせて、その場で意気投合したのが始まりだった。酔ってしまった日向を介抱しようと狛枝は自分のアパートに泊めてくれたのだが、そこでどういう訳か酔いに任せて体の関係を結んでしまったのだ。
ほろ酔いで寝ている所にキスをされたら、男だからと拒絶するのが普通だろう。だが日向は酒の所為でマトモな思考が出来なかったし、更に言えば狛枝の容姿も美し過ぎた。男にしては細く華奢な手足と妙な色気を持つ彼。「嫌だったら、止めるから…お願い」と潤んだ瞳で訴えられてしまえば断れなかった。結局、嫌な気分を味わうことなく―――寧ろ今まで生きてきた中で最高の快楽を堪能し―――日向はその夜童貞を卒業した。
体を重ねたからには責任を取りたい。日向からの申し出に狛枝は顔を赤くして嬉しそうに頷いた。それからは友達兼恋人という、付かず離れずの関係を続けている。自分と正反対のタイプであるにも関わらず、狛枝とは不思議と呼吸が合った。ついでに言えば、体の相性も抜群に良かった。


今夜も本能の赴くままに夢中で腰を振り、共に絶頂に達した直後であった。恋人の熱い体内に吐精した後の独特な気だるさ。ベッドに深く沈み込めば、そのまま落ちるように眠れてしまうほどだ。日向はそれが嫌いではなかった。本来であればもう何回か行為をする体力があるのだが、今は11月だ。卒業論文も佳境を迎え、大学に滞在する時間も長い。要するに日向は疲れていた。
「あー……。狛枝…、俺今日は疲れてるんだよ…」
「疲れてる? どうして?」
「…どうしてって、お前今11月も終わるんだぞ? 卒論はどうしたんだよ…」
「ボクの方は卒研ね。んぅううう…、ボクの方は上手く行き過ぎててね。実は暇なんだよ!」
ニコッと爽やかに言ってのける狛枝に、日向はガツンと頭を殴られたような衝撃を覚えた。暇…、暇…。今の自分とは最も無縁な言葉だ。ズキズキと偏頭痛を訴える頭を手で押さえながら、日向は溜息を吐く。
「これもね、全部日向クンのお陰だ。本当にありがとう」
「は? 俺が関係あるのか?」
「今回サンプルにキミの血液を使ってるんだよ。この間医務室で採血したでしょ? 2週間くらい見込んでいた工程が4日で出来ちゃってね。あっという間にチャンピオンデータが出たんだよ。本当、日向クン様様さ!」
朗らかに弾んだ声をあげる狛枝に日向はじっとりと重い視線を送った。疲れてると言ったのに嫌味のつもりなのだろうか?
「……それさ、元々4日で出来る実験だったんじゃないのか?」
「ううん、そんなことないよ。だって同じ実験やってる人いるけどまだ終わってないもん」
「………」
彼の言う卒研の内容がどんなものか全く窺い知ることは出来ないが、1つだけ分かることがあった。それはここ最近の狛枝はとても元気ということだ。クタクタの体に鞭打っている自分とは大違いである。だからなのか、と日向は思考を巡らせた。元気が有り余り、狛枝がセックスを強請るのは滅多にないことだった。誘いの乗れてしまえばどんなに良かったかと思う。狛枝の体は男の癖に非常に抱き心地が良く、肌のきめ細やかさ、嬌声の麗しさ、表情の厭らしさも然ることながら、感度も締まりも極上なのだ。体力の限界まで犯し抜きたい。でも今の自分には無理だった。
「悪いけど…、出来ない。頼む、寝かせてくれ」
「えっ、」
「ふぁ〜……。んん…、また明日な?」
「や…嫌だよ、日向クン! ねぇ、頑張ろう? ボク…疼いたままなんて、眠れないよ…」
「離せって…! 明日も早いんだよ」
猫撫で声を出しながら腕を掴んでくる狛枝をパッと振り払い、日向は寝返りを打った。背中を向けて、拒否の意を伝えればきっと彼も諦めてくれるだろう。もしかしたら涙を浮かべながら追い縋ってくるかもしれない。その時は…気分と残り体力によって相手をしてやろう。たまには焦らすのも悪くない。そんなことを考えながら目を閉じる。しかし狛枝の反応は日向が想像していたのとは180度逆の物だった。
「………。キミってさぁ…サービスとか気遣いとか、そういうの出来ないタイプなの?」
「……狛枝?」
先程までの甘く人懐っこい声が一変して冷たくふてぶてしいものになる。あまりの変わりように日向は慌てて顔を狛枝に向けた。案の定、そこには不機嫌そうに顔を強張らせた狛枝がこちらを見下げていた。柳眉を逆立てて、ゴミでも見るかのような蔑むような視線だ。美人は怒ると迫力があるな…と日向は睡魔に襲われながらもぼんやりと考えた。
「折角こっちが珍しく下手に出てあげてるのに、それすら汲んでくれないだなんて…」
「…だから疲れてるんだって、何回言ったらっ」
「は? は? は? ボクが疲れて寝たいって言ってる時には、無理矢理腰を掴んで中に突っ込もうとするよね?」
「っ!! そ、それは……その、」
「何て自分本位なんだ…。はぁ…、絶望的だね!」
「…おい、怒るなよ」
「別に怒ってないよ? 呆れただけさ。…良いじゃないか、寝なよ。何なら子守歌でも歌ってあげようか?」
「狛枝……。機嫌直してくれよ、な?」
「んぅうううう…」
状況は芳しくない。長年の付き合いでそれを察知した日向は腕に力を入れて疲労した体を起こした。唇を噛んで視線を逸らす恋人。セックスが出来ないという不純な動機で拗ねるなんて、可愛い奴だ。こちらを向かせて柔らかい唇にキスをする。それでも機嫌を直してくれないらしい。上目遣いで睨まれてしまった。
「俺だって疲れてなければしたいぞ。でもさ…、」
「うん……」
顎で指し示した股間には萎えて小さくなった日向のペニスがあった。しょんぼりした面持ちで狛枝がそっとそれを優しく撫でた。彼の可憐な白い指で触れられれば、いつもであれば10秒も経たない内に膨らんで大きく硬く育つものの、今はピクリとも反応しない。先端を突いてもカウパーは染み出すことなくカラカラに乾いていて、ふにゃふにゃと芯は曲がってしまう。
「ごめんな、狛枝…」
「……日向クン。ううん、ボクの方こそごめんね。キミは悪くないのに…」
「良いよ。俺もお前が疲れてるのに無理矢理抱いてたし」
素直に頭を下げると狛枝は緩く首を振った。いつもの穏やかな表情に戻った彼は日向のペニスをなおも弄った。根元から立たせるように頑張っているのだが、狛枝の必死な思いも虚しくくにゃりと倒れる。大真面目な顔で一生懸命擦っている恋人を日向は可哀想に思った。
「狛枝、もう…」
「お願い、日向クン! もう少し頑張らせてくれないかな? キミは寝てていいからさ」
トン…と狛枝に肩口を押されて、日向は再びベッドに倒れ込んだ。仰向けに寝転んだその足の間に狛枝が入ってくる。大事そうに日向のペニスを両手で包み込んで、やわやわと優しく揉んだ。しばらく触った後に狛枝はペニスに顔を近付ける。そして小首を傾げて日向を窺ってからペニスに唇を寄せて、ちゅっと先端にキスを落とした。もちろん体は反応しない。しかし、日向の心にはじわりと愛らしさに滲む。
「……うぅん、ダメ…かな?」
ぽつりと悲しそうに零した彼は今度はペニスに頬擦りをする。萎えているとはいえ、どす黒くグロテスクな男の一物だ。それに頬を赤らめた色白美人が顔を寄せて頬擦りする様は、ミスマッチ過ぎてグッとくる。段々日向は頭が冴えてきたような気がした。いや、気の所為ではない。落ちてくるクセ毛を耳に掛けながら一生懸命奉仕する狛枝に興奮してきたのだ。
「ねぇ、もうちょっと…頑張ってくれないかな?」
狛枝が掠れた声で切願する。しかしそれが向けられているのは日向ではない。彼は柔らかい日向のペニスを熱っぽく見つめて、一途に話し掛けていた。手で擦りながら、ちゅっちゅと芯に細やかなキスを送り、まるでペニスのご機嫌を取るように頬擦りするのだ。すべすべとした彼の頬の感触が一物を通して伝わってくる。ペニスを勃起させるために話し掛けるだなんて、何て厭らしい男なのだろう。日向の頭からは眠気が吹っ飛び、腰回りにじっとりとした熱が纏わりついてくる。
「んぅう…、どうしたらキミは元気になるの? お願いだから、おっきくなって…」
「……っ、は……」
「…あれ? ちょっと硬くなったみたいだね! んんっ、頑張って…? ボクのためにもう少しだけ」
桜色の唇が開いて、真っ赤な口内が垣間見えた。涎が滴る舌がねっとりと日向のペニスを舐める。湿った生温かい感触が堪らない。生き物のようにペニスに巻き付いた舌が絶妙な動きで日向を翻弄する。鈴口を抉り、裏筋を軽く擽る。萎えていたものが確実に大きさを増している。それに満足そうに微笑んだ狛枝は、緩慢な動作で日向に見せつけるように舐め上げた。
「あぁ、いいこだね…。ボクのお願い聞いてくれたんだ。本当にいいこ…。んっふっ」
「っあ……、ん…っ」
膨らんだペニスに甘ったるい声を投げかけ、大きくなったご褒美とばかりに先端を口の中に入れて、クチュクチュとしゃぶる。ドクンと日向の鼓動が大きく高鳴った。眠気に負けそうだった5分前が嘘のようだ。下半身に血流が集まってくる。狛枝が先端から唇を離した一拍後に、熱いカウパーが鈴口からぷくっと染み出してきた。目敏くそれに気付いた狛枝はすぐに舌でそれを掬い取る。
「あは…! …出てきた。んぅ…はぁ…、おいしいね。日向クンの味…」
「んん、〜〜〜っ…、ふぅ、狛…、枝…」
「ボクもっとほしいなぁ…。どうかな? あ…っ、いいね。ふふっ…おちんちん、硬いよぉ…」
うっとりとした表情で狛枝はペニスに頬擦りをする。人形を可愛がる子供のようにペニスを撫でて、ちゅっちゅとキスを送る無邪気な淫猥さ。熱くなる頭に日向はクラクラと眩暈を覚える。呼吸が荒くなるにつれて、本能は硬さを増し、狛枝の顔つきも輝きを取り戻してきた。日向のペニスは既に支えが必要ないくらいに天に向かってそそり立っている。しかし狛枝はまだ満足いかないのか、手で擦るのを止めない。体を離して真上から涎をツっと垂らし、芯に馴染ませてから咥える。
「…んっんっ、あぁ…、んん…ちゅ、……ふっ…、日向クゥン…!」
「ハァッ、は、…こまえだ、うぁ……っ、んふ……、あぁ…ッ」
頭を激しく動かしてジュボジュポと狛枝はペニスをしゃぶった。乱れた髪を気にせず一心不乱に口の中へと導く。カッと内側から生まれた熱が日向の全身を焦がしていた。ぎゅううっと締め付けられ、集束していく快感。自然と腰を振り、狛枝の喉を突き上げると苦しそうに呻き声を上げる。
「んんぅ…! はぁ、はぁ…好き…、ひなたクンの、おちんちん…ボク好きだよ…」
「っちんこ、だけかよ…っ!」
「そんなことある訳ないじゃないか…! つまらないこと聞かないでよ、日向クン」
「……だって、」
「自分のおちんちんに嫉妬するなんて、可愛いね…キミは。……日向クン、大好き」
「っ! 狛枝、俺もお前が大好きだ…!」
「ふふっ、嬉しいな…」
唇を涎とカウパーでベトベトに汚した狛枝が息を切らしながら顔を上げる。ビキビキと血管が浮き、射精の時を今か今かと待ち侘びている日向のペニスを見て、狛枝はモスグレイの瞳をぐるぐると歪ませた。ヒクヒクと不気味に吊り上がる口角。長い時間を掛けて、やっと願いを叶えたのだ。興奮で我を忘れてしまっても仕方のないことである。熱の行き場を失った日向は開放を求めて、起き上がる。そして力なく狛枝の肩を掴んだ。
「…狛枝、ぁ……っ、俺、もう…!」
「分かってるよ、日向クン。…ほら、準備は出来てるよ?」
妖艶に笑った狛枝は後ろを向いて、尻をツンと突き出すようなポーズを取った。白いつるりとした尻たぶの真ん中にはくすんだピンク色の窄まり。日向自身を温かくねっとりと包み込み、最上級の快楽を与えてくれる秘密の花園だ。大きく深呼吸をしながら、日向は狛枝のすんなりと括れた腰を掴む。
「いくぞ……!!」
「んぅ…、きて…きてぇ…!」
尻を僅かに揺らし、淫らに誘ってくる恋人。その姿に嘗てない昂りを覚えながら、日向は一気にペニスを突き立てた。

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SCP-___ - "Fortune"
SCP-___ - "Fortune" ("幸運過ぎて怖いね!")
Object Class: Safe
取扱方:
SCP-___はバイオ研究エリア12のEクラス職員寮に住んでいます。あらゆる意図・目的のために、SCP-___はレベル0クリアランスの職員としてSCPの性質について漠然とした知識しか持たず、取扱いに注意が必要な情報は知らされていません。また左腕を切除しており、作業に不自由が生じる可能性があります。研究者および監視スタッフはSCP-___だけがEクラス職員グループから外れないように留意して下さい。
SCP-___は通常のEクラスの任を解かれ次第、適切なクリアランスが与えられ、新しい寄宿舎に移動することになっています。新しいSCPまたはKeterクラスに分類されるSCPのどんな実験にもSCP-___を参加させないようにして下さい。

全職員へのメモ:
SCP-___の異常な性質が最近発見されたことにより、___はサイト55-に移送され、単独監禁室に収容されました。このサイトで作業する時には全職員は可能な限り、全ての安全措置をとって下さい。最低限の生存ならびに安全を保証するために、___はサイト職員とのインタラクションが許可されていません。ただし、SCP-XXXは除外します。―博士

概要:
SCP-___は白い肌と淡色の髪を持つ20代前半の日本人男性です。SCP-XXXと関係性が非常に深く、SCP-XXXの精神状態を保つためにも週に1度の面会は必須となっています。未来機関より提示されたSCP-___に関する資料を閲覧するにはセキュリティクリアランスレベル3以上の権限が必要です。
SCP-___は、短期的幸運及び長期的不幸に関し注目に値する傾向を示します。対象が歳の時に対象の家族とともに巻き込まれた飛行機ハイジャック事件からもその特性は明らかです。対象は生存しつつもその両親やハイジャック犯諸共、機内のほぼ全ての人間が死亡しました。

未来機関より引き渡され、LvE-64853であったは、超高校級の絶望""より精神を害された超高校級の幸運でした。その後、プログラムに掛けられた彼は更生することが出来ましたが、未来機関解体のため身柄を財団に引き渡されました。彼はサイト-19に配属され、レベルEクリアランスに割り当てられました。___が最初に曝された実験はSCP-XXXですが、彼が猛り狂って部屋中の人々を殺したのに対し、SCP-___は武装対処チームがSCP-XXXを取り押さえるまで回避しました。更にSCP-XXXの正気を取り戻させることに成功しています。これは以前からの彼らの結びつきの強さが関係しています。

SCP-___はSCP-XXXの事故の翌週にSCP-075の実験に加えられました。このテストにおいて、SCP-___の確率に対する不自然な効果が発見されました。活性化したSCP-075の速度と反射時間を調べるためにその収容室に置かれたSCP-___は、抑制チームがSCP-075を再び凍結するまでに合計3回SCP-075を避けることに成功しました。

Euclidクラス暴走事故、Keterクラス曝露実験を生き延びたことから、SCP-___は統計的に異常です。彼の3週目の勤務でSCP-082とともにいながら7日間全てを生き延びたことから、博士が調査を始めました。

博士の仮説はSCP-___は故意に統計的異常を生成しているというものです。彼は約50回コイン投げで表を出し、サイコロ2個を投げて25回7を出し、標準的トランプ1セットから13回ハートの13を引きました。しかしながら実験とは無関係な生活において、その代償を受けるかのごとく不運が降り注ぎます。後に博士はSCP-の実験を実行する許可を得ました。SCP-___はSCP-を再び操作し、100回連続で[削除済み]。そして博士はLvE-64853をSCP-___として再分類し、彼はEクラス職員の毎月終了措置を免除されました。


実験記録 ___-1:
実験内容:カード透視
結果:100%成功 [削除済み]

実験記録 ___-2:
実験内容:ルーレット
結果:100%成功 [削除済み]

実験記録 ___-3:
実験内容:ポーカー
結果:最後まで毎回勝ち手であったが、「ウェント・オール・イン」(全額の賞金を賭けた)してゲームに負けた。

実験記録 ___-4:
実験内容:「ロシアンルーレット」、弾倉に弾を込め、それを1〜6発まで増やしていく。
結果:6つの弾倉に5つの弾を込めた状態で空の弾倉を引き当てた。6つの弾を込めた状態ではパーツ故障により不発となった。

実験記録 ___-5:
実験内容:至近距離で頭部に銃口を向ける。
結果:17種の異なる武器による60回にわたる連続的な不発。検査室で試験したところ、不発の理由は、破片による目詰まり、パーツ故障、機械全体的な故障によるものと、多岐にわたる事が判明した。特筆すべきは最後に用いた武器、リボルバー[信頼性の高さで有名な武器の一種]は回試射を試みたのにもかかわらず、軽度な障害によって動作不全し、その動作不全は実験室での254回目の再現実験で一度起きた以降発生していない。___-5実験記録に於いて、リボルバーは8回連続燃焼不全した。


SCP-___は彼の意思により、彼の周囲の生起確率に影響を与えている徴候を示していました。事象から逃れようとする努力はSCP-___の事象への影響を回避する可能性があることがテストで証明されています。また代償として訪れる不運は得られた幸運と等しいと彼は発言しており、博士の行う簡易実験には重大な影響を受けないものの、Keterクラスに分類されるSCPの実験の後には原因不明の高熱に見舞われたりと健康状態を酷く害しています。

補遺 1-A-07X: 20日より、SCP-___は移送されセキュリティプロトコルは強化されました。これは最近の監査報告書においてSCP-___収容時よりバイオ研究エリア12全体の死並びに傷害の確率が.%近くまで上昇したことが博士によって見出されたためです。SCP-___の異常性は[データ削除]による確率に影響すると理論づけられており、カオス理論ではこのような干渉が起こりうる影響は[データ削除]界規模で導かれると提言されています。
さらなる情報はクリアランスレベル4以上を持つ職員のみ利用できますが、さらなる責任の[編集済み]


インタビュー:SCP-___
インタビュアー:博士

<記録開始>
(博士がSCP-___に椅子に腰掛けるように促す)
SCP-___:あはっ、今度は何の実験かな? あ…、録音してるんだ、この会話。
博士:ハロー、SCP-___。察しが良いね。心配しなくても2〜3の質問に答えてくれれば部屋に戻っても良いよ。
SCP-___:ふぅん、それじゃ大人しくしててあげるよ。どうせ部屋に帰っても、日常的にボクの才能を利用した実験をされるだけだけどね。
博士:………SCP-___、あなたは何故そこまでSCP-XXXに拘るんですか?
SCP-___:その質問に答えないっていう選択肢はないの?
博士:それはどういう意味ですか?
SCP-___:彼については、何というか…説明しづらいんだ。ボク自身も良く分かっていない所が多くて、そう簡単には言葉に出来ないよ。
博士:(ため息)オーケー、SCP-___…。ゆっくりで良いからSCP-XXXについて思っていることを話して下さい。
SCP-___:新世界プログラムで起こったことは聞いてるかな? ボクがあの中でどんなことをしたのかも知ってる?
博士:ええ、大体は。
SCP-___:そう…。SCP-XXX…、いやクンはボクの初めての友達で、唯一ボクに[削除済み]
博士:あなたは彼に特別な思いを抱いていますか?
SCP-___:そうだね…。ベクトルは様々であれ、ボクはクンの存在を無視することが出来ない。彼の"才能"には裏切られたから憎んでいるし、それと同時に自分の半身のように[削除済み]。どうしようもなく…。クンとボクは良く似ているんだ。心の底から希望に憧れて、それ故に自分の運命に足掻いて…。ボクを分かってくれるのは世界中で彼だけだし、同時に彼を分かってあげられるのはこの世においてボクしかいないんだ。
博士:SCP-___、あなたが新世界プログラムで過ごした映像記録は全て興味深く拝見しました。この意味が分かりますか?
SCP-846:クンの話からの流れってことは夜時間かな? ふふっ、もしかして[検閲済み]のことを聞きたいの? コロシアイ? …それともアイランド?
博士:あなたはとても頭が良いですね。と言っても聞きたいのは詳細ではありません。あなたにとってその行為はどういう意味があるのか教えてくれませんか?
SCP-___:………。意味? そんなの、ボクにも分からないよ…。あれは頭で考えることじゃないんだ。本能的にボクが彼を欲しているだけ。喉が乾いたら、水を飲みたくなるでしょ? それと同じことさ。クンが欲しいと思ったら、彼以外のことが頭から吹き飛んで、そのまま[検閲済み]をするんだよ。彼に抱かれている時はボクは自分の才能を忘れてしまう。この後に幸運が来るとか不運が来るとか…、とにかく全てね。クンがいると安心する。何も怖くないんだよ。だからボクは[削除済み]
博士:そうですか。SCP-___、質問に答えてくれてありがとうございます。
SCP-___:え、もう終わり?
<記録終了>


文書 ___-1:
彼は常にSCP-XXXの境遇を気に掛けています。しかしながら余計な情報を与えないようにして下さい。人当たりの良い好青年を装っていますが、彼は非常に狡猾な性格で、職員の隙を突いて今までに3度も脱走を試みています。その際には必ずSCP-XXXを救出しようとしていました。逆に考えれば、SCP-XXXが財団に拘束されている限り、SCP-___は脱走することが出来ません。-博士

文書 ___-2:
SCP-___とSCP-XXXの精神状態を安定させるため、20日より週に1度の面会を許可しました。面会中は脱走の可能性が高くなりますが、監視員を3名付けた上、逃げ出した場合はSCP-XXXもろとも射殺する旨をSCP-___に申し伝え了承を得ているため、その可能性を抑えられていると想定されます。面会中のSCP-___は非常に穏やかな表情で楽しげにSCP-XXXと会話をします。SCP-XXXも暴走することなくそれに応えており、面会の後は職員の命令にも素直に従うようになりました。-博士

文書 ___-3:
監視の目があるにも関わらず、SCP-___はSCP-XXXと[検閲済み]を行いました。当初はSCP-XXXがSCP-___を襲っているように見受けられましたが、そうではなく親愛の証として合意の上で[検閲済み]をしているようです。未来機関からも新世界プログラム内の電脳空間で同じような行為をしていたとのレポートを受け取っています。博士に報告した所、SCP-___の検証実験に役立つ可能性があるため、介入はしないようにとの回答でした。-研究助手

文書 ___-4:
SCP-___とSCP-XXXの[検閲済み]に対し、必要な道具を早急に準備して下さい。激し過ぎる行為はSCP-___の体調不良に繋がります。またSCP-___の移動の手間を省くため、2人が収容されている単独監禁室の場所を変える必要があります。カウンセリングが奏功すれば、SCP-XXXは将来的にSafeと分類される可能性があります。-監視員

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SCP-XXX - "Perfect Man"
SCP-XXX - "Perfect Man" ("完璧な男")
Object Class: Euclid
取扱方:
SCP-XXXは保持保管セルに常時保たれる事になっています。4台以上の防犯カメラをセル内に設置しなければなりません。SCP-XXXは恒常的に監視下に置いて下さい。いかなる異常行動、及びカメラ映像を不鮮明化する試みは、全面的緊急事態とします。全SCP-XXX研究員は、セル内に進入する前に危険物所持チェックを受けなければなりません。セル内に潜在的危険物が置かれていないか毎日確認されます。
収容エリア25bは海面下200mより下の地震学的に安全な固体の岩盤層にあります。収容施設への出入り口は垂直エレベータのみで50m毎に厚さ20cmチタン壁で作られたブラストドアが設けられてます。エレベータシャフトは使用時以外は海水に満たしておきます。

収容区画25bの構成は以下の通りです:
外部脅威に対し、近接格闘術と防御戦術を訓練されたスタッフから成るOuter Security Perimeter。
支援施設と職員の宿舎から成るAdministrative and Support Area(ASA)。
1.5mの補強されたチタンが入っている7m立方の Primary Containment Zone(PCZ)。PCZは浸水しており必要に応じて排水する設計、アクセスがない限り海水で満たされたままになっています。
150mのPCZとASAをつなぐ唯一の出入り口"殺害通路"(水、電力、排水口、換気口含む)。通路の壁と床はPCZと同様の補強と20000Vの電気ショックを流せるよう施されています。

殺害通路の入り口の詰所には常に武装した3人の警備員を配置します。軍備に制限はなく、最低でも油圧式CIW1つを視界の妨げにならないよう通路下に配置し、攻撃に巻き込まれないようにプレキシガラス防御壁を設置します。

脱走した場合、全現場スタッフは即座に最寄りのセキュリティ・ステーションで武器とアーマーを手に入れて下さい。スタッフはSCP-XXXが無力化が確認されるまで警戒レベル1を保って下さい。脱走から90分が経ちLevel4以上の職員から警戒解除命令が下されていなければ、最終手段を起動させ、捕獲する前に海水を浸水させ最低24時間アクセス・シャフトを閉め切ります。必然的に全現場スタッフは死亡することになります。

現在の所SCP-XXXは脱走の兆候を見せていませんが、SCP-___に3度も救出(いずれも失敗)をされており、心境に変化があったのか、現場研究員やスタッフに嫌悪感を示す発言が零れるようになっています。

概要:
SCP-XXXは黒い長髪と赤い瞳を持つ20代前半の日本人男性です。SCP-___と関係性が非常に深く、SCP-XXXの精神状態を保つためにも週に1度の面会は必須となっています。未来機関より提示されたSCP-XXXに関する資料を閲覧するにはセキュリティクリアランスレベル4以上の権限が必要です。
SCP-XXXは、かつて私立の高等部に予備学科生として入学しました。その頃の彼は平均的な容姿、平均的な知識、平均的な身体能力を持つ極めて普通の少年だったようです。しかし超高校級の才能開発のため、学園側から提案されたプロジェクトでのロボトミー手術を受け入れることになり、その結果[削除済み]

未来機関より引き渡されたは、超高校級の絶望""より精神を害された超高校級のでした。その後、プログラムに掛けられた彼は更生することが出来ましたが、未来機関解体のため身柄を財団に引き渡されました。(引き渡し日はSCP-___の日後です) 彼はサイト-に収容されましたが、殺戮衝動が収まらず厳戒態勢のまま隔離されました。その時にエージェントを始めとする3名を殺害しています。室内にはSCP-___もいましたが、彼には一切手を出しませんでした。更にはSCP-___の声により攻撃の手を止めました。

通常は無表情ながら誰に対しても礼儀正しく話しますが、その口調は冷たく機械的だと言われます。とても有能で彼の機嫌次第では職員を手伝います。はるか昔のことから現在まで起きた出来事を詳細に説明することが出来て、滅んだものも含め世界中で使われている多種多様な言語を話すことができます。また暗号学者や趣味の研究者によって生み出されたものを含む200以上の方言を流暢に操ります。映像記憶を公言しており、1分半めくるだけで800ページの辞書の一言一句まで覚えていました。実施した知能検査ではすべて平均以上の点数を出しました。

現在の彼はロボトミー手術の後遺症で深刻な精神分裂を引き起こしています。また才能が使える時と使えない時があり、主軸となる彼の精神状態に依存することが想定されています。変化のタイミングは不明ですが、私立で行われたプロジェクトに関わるフレーズは彼の精神に影響を及ぼす恐れがあるため厳禁です。精神状態が不安定な時は終始言動が一致せず、筋の通った会話は困難です。罪の意識に苛まれるのか眠ることを恐れたり、「消えない、消えない…」と呟きながら1日中手を洗ったりしています。しかしながら彼を大人しいと判断しては決していけません。監視員ら現場スタッフ8名が無慈悲にも彼に殺害される事件が起きています。


SCP-XXXとのインタビューの一部複写(5日目):
質問者:博士。
前書:SCP-XXXは数日前に確保され、サイト-の仮収容室にて収容されました。博士の背後にあるビデオ・カメラはインタビューの映像記録として提供されました。
SCP-XXX:ここが、あの財団の中…ですか。思ったよりも普通ですね。ツマラナイ…。
博士:その通り、XXX。いや、と呼ぶべきかな?
SCP-XXX:それはプロジェクトの被験者に付けられる名前です。僕の名前はです。まぁ、どっちでも構いませんが。
博士:記録しましょう。[中断、紙を引っ張る音が聞こえる] 君が思い出せる最初の出来事は何ですか?
SCP-XXX:[長く中断、その後鋭く息を吸う] 手術台の上で目覚めました。それが最初ですね、恐らくは。
博士:それ以前のことは何も覚えていないのですか? いつ頃のことですか? 年齢は?
SCP-XXX:…質問は1つずつにしてくれますか?
博士:質問に答えて下さい、お願いします。
SCP-XXX:明確に記憶していません。とても昔の事だと思います。これは推測ですが、私立が[削除済]。
博士:それで何歳なのですか?
SCP-XXX:2歳です。記憶があっていればですが。それで未来機関に捕縛されて、プログラムに[削除済]。そこから先は貴方も知っているでしょう。
博士:SCP-___についてはどう思っていますか?
SCP-XXX:SCP-___? ああ、ヘドロのようなあいつのことですか。…の想い人のようです。
博士:想い人? ということは君は彼のことが好き?
SCP-XXX:…さぁ、どうでしょう。愛というものが、僕にはいまいち分かりませんから。


SCP-XXXとのインタビューの一部複写(28日目):
質問者:博士。
前書:SCP-XXXに精神的な変化が見られたため、インタビューを行うことになりました。
SCP-XXX:先生、今日の実験は何をするんですか? 俺は、才能を手に入れられるんですよね…?
博士:SCP-XXX? 君は何を言ってるのですか?
SCP-XXX:え…、SCP-XXXって…俺のこと? はどこですか!? いつも実験前にあいつのカウンセリングを…っ。
博士:? もしかして超高校級ののことですか?
SCP-XXX:っ!! そうです。実験前の脳波がどうとかって変な装置を付けられるカウンセリング…。
博士:……君の名前はですか? それと今は西暦何年?
SCP-XXX:何でそんなこと…。名前はそれで合ってます。西暦は…20年、だと思う。
博士:分かりました。SCP-___のことは分かりますか? 名前は
SCP-XXX:し、知りません…。誰のこと、だ? ……本当のことを教えて下さいっ! 俺は希望になれるんですよね!?
博士:…今日の所はここまでとしましょうか。部屋でゆっくり休んで下さい。
SCP-XXX:ま、待って…! 待ってくれよ! 早く手術してくれっ。俺は才能が…あっ、あああああああッ! 今のままじゃ嫌だ!! 才能を手に入れて、胸を張れる自分に…! 何でもする、何でもするから…お願いだ!! 俺に、俺を…っ。


事案報告XXX-01:
日付://
場所:サイト-

SCP-XXXの居住区であるサイト-にて監視スタッフが襲われました。室内の扉付近で3体の死体(2体は男性、もう1体は女性の死体)が発見されました。
検視によりSCP-XXXも少々の怪我を負っていたことが判明しましたが、早急に治療が行われたため大事には至りませんでした。SCP-XXXはこの件に関して「覚えていません」と答えていますが、監視カメラの映像の最後には彼自身が鉄パイプを振るう画像が残されていました。その後、SCP-XXXは保護、収容のためサイト-に移動になりました。
その中で生き残ったSCP-___は部屋の隅で気を失っていましたが、SCP-XXXにより気絶させられたようです。体に傷はないようで、ヘルスチェック・メンタルチェックも問題ありませんでした。事案詳細は記録映像を確認して下さい。

事案報告XXX-02:
日付://
場所:サイト-

エージェント・プロジェクトに関する質問をするためSCP-XXXの収容室に入りました。SCP-XXXはエージェント・から個人用の老舗和菓子が贈られていました。最後の予定給餌より12時間37分過ぎていました。エージェントが立ち入ると同時に、SCP-XXXは彼らに立ち去るよう要求しました。当初エージェントたちが従わなかった時、SCP-XXXは興奮し始め、彼らに向かって叫び、必死にジェスチャーをしました。エージェントたちがドアを閉めたすぐ後に後ろから飛び掛かり[削除済]。

[削除済]SCP-XXXの収容室は甚大な被害が発生し、観察室は炎によって前例のない温度になりました。記録によると温度は摂氏℃を超えていました。エージェント・以下5名の死は通常の手順に従って取り扱われました。エージェント・は報告書作成時点ではまだ治療中です。恐らく不安定な精神状態のSCP-XXXに対し、プロジェクトを示唆する発言をしたと思われます。被害を受けた収容室は修理し、今後別のSCPの収容に利用します。

事案報告XXX-03:
日付://
場所:サイト-

SCP-___が救助に来たことにより、防火金庫がSCP-XXXの収容に効果が無いと判断されました。目が覚めるとSCP-XXXは方向感覚を失っていたように見えましたが、予想通り提供された食事を消化しました。それからSCP-XXXはSCP-___への面会を要求しました。収容室はその後セキュリティが強化され、この要請は即座に実行しました。

SCP-XXXで働くまたは観察するスタッフはこの事実と一般的な人型SCPの作業手順をよく覚えておくべきだ。 -博士


文書 XXX-1:
SCP-XXXの精神状態はSCP-___の救助以降全く変わりました。給餌以外で個人用区画から出ることが珍しくなり、SCP-___以外の人間との会話を拒否するようになりました。を利用した監視によるとSCP-XXXは眠るか壁に向かって座る時に僅かに動く様子が確認されました。そのような状態の前兆を見せていないにもかかわらず、典型的な欝の徴候を示しました。行動の変化を観察する、より近い観察が推奨されています。-博士

文書 XXX-2:
SCP-XXXがSCP-___と面会を行った際に、[検閲済み]が確認されました。SCP-___の名前を呼びながら、慈しむように何度も顔中に[検閲済み]をしました。SCP-___の服を脱がせて裸にした後、激しく[検閲済み]をする様子が監視カメラにも収められています。SCP-___も拒絶することなく、寧ろ喜ぶようにそれをSCP-XXXを受け入れていました。彼らは男性同士であり、本来なら[検閲済み]を行う必要は全くないのですが、お互いの関係がそれほどにも強く深いものなのかもしれません。-研究助手


SCP-XXXとSCP-___の逃亡:
SCP-XXXとSCP-___の居住区がエリア25bに移動してから1週間後のことでした。[検閲済み]はSCP-___の体力が許される限り毎日行っていました。一際高いSCP-___の悲鳴に監視員が様子を見ようと中を覗くと、扉の陰に隠れていたSCP-XXXから攻撃を受けました。[検閲済み]をしている間は監視員1名と監視カメラのみの体制だったため、SCP-XXXはそれを狙ったようです。監視カメラの死角で監視員を拘束し、SCP-___と共に脱走しました。
殺害通路に配備されていた警備員3人を難なく倒し、その詰所で本来なら30分掛かる(海水、電気ショック、排気口、換気口等の)セキュリティ解除を3分12秒で終わらせました。またOuter Security Perimeter所属のスタッフ5名を一瞬で戦闘不能にしています。その内、SCP-___を拘束した戦闘員はSCP-XXXの手により殺害されました。2人はゲートBの狙撃を交わしつつ、そのまま脱出しました。

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こまえにゃくんとひなわんくん
あるところにこまえにゃくんとひなわんくんがいました。
2ひきはけんかもするけどとてもなかよしで、まいにちどんぐりのきのしたでおはなしをします。
「ねぇねぇ、ひなわんクン。ボクこのあいだおいけのふちですごいものをみたんだよ」
「すごいものってなんだよ。たべものか?」
「ちがうよ! とってもキラキラしてきれいななにかがおちてたんだっ。あれはきっと"きぼう"にちがいないよ!」
「きぼう…? ってなんだ?」
ひなわんくんはきぼうをみたことがありません。
「きぼうはね、とてもすばらしいものなんだよ!」
「おまえみたことあるのか?」
「ないよ」
「ないのかよ!」
「でもおいけのふちですっごくきれいにかがやいてたんだよ」
こまえにゃくんがこうふんぎみにしっぽをふりふりしながらはなすのを、ひなわんくんはうさんくさそうにみています。
「んぅううう…。ほしいなぁ、きぼう」
「…そんなにほしいのか?」
「うん、もちろんだよ!」
それをきいたひなわんくんはすこしかんがえてからこまえにゃくんのてをとります。
「んぅ? ひなわんクン…?」
「いくぞ、こまえにゃ!」
「いくって?」
「もちろん、きぼうをつかまえにいくんだよ」
「わーい、きぼうっきぼうっ!」
2ひきはおててをつないでおいけのあるみなみへとあるきます。

とちゅうこまえにゃくんはころんだりしましたが、ひなわんくんがたすけおこしてくれたり、いろいろとせわをやいてくれて2ひきはやっとのことでおいけにたどりつきました。
「ついたな」
「うん!」
おいけといってもとてもおおきいです。
もしこまえにゃくんがむこうぎしにいったらこえがききとれないかもしれません。
「こまえにゃ、きぼうはどこだ?」
「えっと、んぅっと…あっちかな? いや、こっちかな?」
「あっちとこっちじゃぜんぜんちがうぞ! おぼえてないのか?」
こまえにゃくんはまごまごしながらあたりをみまわします。
おいけをかこうようにきがおいしげっていて、はっぱのすきまからはこもれびがさしています。
さらさらとしたかぜがふき、ことりたちもぴちぴちとちいさくささやきあっていて、とてもおだやかなばしょでした。
「んぅうう…すごいきらきらしてたのにみつからにゃいよぅ…」
こまえにゃくんはどうやらばしょをわすれてしまったようです。
「もうすこしさがしてみようぜ。だいじょうぶだ、こまえにゃ。きぼう…みつかるから」
「ひなわんクン…」
だいすきなきぼうがみつからなくてなきそうになっていたこまえにゃくんでしたが、ひなわんくんにはげまされてかおをあげます。
2ひきはおいけのまわりをまわってさがすことにしました。
「こまえにゃ、いけにおちるなよ」
「わかってるよ! ボクだってそこまでドジじゃないさ…おっとっと!」
「おい、きをつけろよ?」
おててをぎゅっとにぎって2ひきがあるいていると、おいけのはしっこでピカピカとなにかがひかりました。
ひなわんくんはみみをぴくぴくとさせて、ひかったほうこうをみつめます。
「ん? なんかあそこでひかったぞ?」
「あっ! ボクにもみえた! もしかしたらきぼうかもしれないよっ」
「わ、こら…! おれをおいてくなよ。おーい、まってくれってー!」
かけだしたこまえにゃくんをおいかけて、ひなわんくんもひかりがみえたおいけのほとりにむかいます。

みずくさにかこまれたちいさなくぼみに、おいけからきれいなみずがながれこんでいました。
どうやらなないろにひかっているのはそのなかのようです。
「わぁ…みてみて、ひなわんクン! おみずのなかがきらきらしてるよ!」
「ん? どれどれ…」
「ほら、すっごくぴかぴかちかちかしてる! これがきぼうなんだねっ」
こまえにゃくんにひっぱられて、ひなわんくんもみずのなかにめをこらします。
「…あれ? ひかりがきえたぞ、こまえにゃ」
「ええっ!?」
なんということでしょう。ひなわんくんがのぞきこむとおいけのなかの"きぼう"はふっときえてしまいました。

「んぅうう…、なんで? ボクのきぼう…どこにいっちゃったの? ぐすん…」
めになみだをうかべるこまえにゃくんにひなわんくんはこえをかけられません。
どうしようかとそっとはなれると…
「あっ、きぼうだ! きぼうがもどってきたよ!」
「な、なんだって!?」
なんとみずのなかに"きぼう"がもどってきたではありませんか!
ふたたびひかりだしたきぼうをつかまえようとひなわんくんがのぞきこむと…
「お? またきえちまったぞ…」
「な、なんで!? んぅうううっ、きっときぼうがキミのこといやだっておもってるんだよ!」
「はぁ!?」
「もうっ、いいからひなわんクンはあっちにいってよ!」
「〜〜〜っこまえにゃのばか! しらないからなっ」
「ボク、きぼうがみたいんだもん!」
ひなわんくんとこまえにゃくんはわんわんにゃあにゃあいいあらそいをはじめます。
おこったひなわんくんはおいけからはなれていってしまい、こまえにゃくんはそのばにころんとねころがって"きぼう"をかんさつすることにしました。
「ふふっ、きれいだなぁ…」
こまえにゃくんはきれいなものがだいすきです。
なないろにひかるきぼうをにこにことみていましたが、ひなわんくんのことがちらりときになります。
「んぅ…ひなわんクン?」
ふりかえってなまえをよびましたが、そこにはだれもいません。
「かえっちゃったのかな…」
おみみをすませてもことりのさえずりがきこえるだけです。
くんくんにおいをかぐとひなわんくんののこりががかすかにかおりました。
「い、いいんだ! ボクにはきぼうがあるんだからっ」
ふたたびころんところがっておみずのなかをのぞくこまえにゃくんでしたが、なぜかとてもさびしくなりました。
さびしい? きぼうがそばにいるのにどうしてでしょう?
「ひなわんクン…」
こまえにゃくんはたちあがってあたりをみまわします。
だいすきなかれにどうしてもそばにいてほしい。
むねがぎゅっとくるしくなったこまえにゃくんはひなわんくんをさがすことにしました。
「うう…ひなわんクーン! どこにいるのー?」
さくさくとやわらかいくさをふみながらもりのなかでよびかけます。
こまえにゃくんはこうかいしました。ボクはひどいことをいっちゃったんだ…と。
めからぽろぽろなみだがでてくるのをふきながらあるいていると「こまえにゃ?」とききおぼえのあるこえがします。
そのほうこうをみるとひなわんくんがたってました。
「!? ひなわんクンっ? かえったんじゃなかったの?」
「おまえが"きぼう"みてるあいだ、ひまだったからな。そのへんあるいてたぞ」
「そ、そっかぁ…」
「こまえにゃ? なんでないてんだよ!」
じぶんをおいてかえったんじゃなかったんだ…。こまえにゃくんはうれしくなってひなわんくんにおもわずだきつきます。
ひなわんくんはびっくりしたようですが、そのままだきとめてくれました。
「ひなわんクン、ひなわんクゥン…!」
「こまえにゃ…」
こまえにゃくんはじぶんのふわふわとはちがう、さらさらとしたひなわんくんのけなみがだいすきです。
すりすりとかおをよせるとひなわんくんはぺろぺろとやさしくなめかえしてくれました。
「おれがおまえをおいていくわけないだろ?」
「んぅうう〜…、ありがとう。ひなわんクン…」
よしよしとあたまをなでられてこまえにゃくんはにっこりとわらいます。

「もうきはすんだのか?」
「ん? う、うん」
「おれじゃきぼうはつかまえられないのか…」
「え?」
「おまえがほしいっていうから、つかまえてプレゼントしようとおもってたんだけどな」
てれくさそうにひなわんくんはあたまをかいています。
こまえにゃくんがあいてのやさしさにむねがきゅんきゅんとくるしくなったそのときでした。
「っ!? こまえにゃ…、あれをみろ!!」
しっぽをピンとたたせて、ひなわんくんがおおきなこえをはりあげます。
「な、なに? きゅうにどうしたの??」
「…もしかしたら、"きぼう"がてにはいるかもしれないぞ…っ」
なにかをみつけたらしいひなわんくんはきのうえのほうをじっときいろいめでみています。
「んぅう? ひなわんクン…?」
「おまえはちょっとここでまってろ。うろちょろするなよ?」
「わ、わかったよ」
ひなわんくんはいったいなににきづいたのでしょう? こまえにゃくんにはぜんぜんわかりません。
ひなわんくんはすたすたとおいけのほとりにあるおおきなきにちかづいていきました。
たいようのひかりがすけて、とうめいなみどりいろがひなわんくんにふりそそぎます。
「なにするのかな?」
いわれたとおりおとなしくみていると、ひなわんくんはよじよじとそのきにのぼりはじめました。
「え…!? ま、まってよ! ひなわんクン、あぶないってば!」
「いいからっ、おまえはそこにいろよ!」
ひなわんくんはきのぼりがあまりとくいではありません(いぬなので)
しんちょうにしんちょうに…しっぽでうまくばらんすをとりながら、きにするどいつめをひっかけてうえへうえへとすすみます。
はらはらどきどき!
こまえにゃくんはおろおろしながらひなわんくんをみまもっていました。
やがてえだのわかれているきのまたにこしかけると、ひなわんくんはきあいをいれてとあるえだにがっしりとつかまります。
「ひなわんクン…」
こまえにゃくんはやっとひなわんくんがなにをしたいのかがわかりました。
きのえだのさきにはからすのすがあります。おそらくかれはそれをめざしているのでしょう。
「ひ、ひなわんクン。きをつけてね!」
「わかってるっ、もうすこしだ…」
えだがひなわんくんのおもみでぎしぎしとしなります。
からすはおうちをるすにしているのでしょう。なきごえのようなものはきこえません。
すにたどりついたひなわんくんはなにかをみつけたのか、めをかっとひらきます。
よそうどおり…。そのかおにはそうかいてありました。
そしてすからなにかをつかんで、のぼってきたよりかんたんにするするときをおりてきます。
「だいじょうぶ?」
「こ、こんなのらくしょうさ!」
すとんとじめんにあしをつけたひなわんくんにこまえにゃくんはたっとはしりよります。
あたまについてるはっぱをよけてあげていると、ひなわんくんは「んっ」となにかをこまえにゃくんにつきだしてきました。
「えっ、なぁに?」
「これが"きぼう"だよ、こまえにゃ。おまえにやる!」
ふにふにとしたひなわんくんのにくきゅうのうえには、とうめいできらきらとかがやくきれいなかたまりがありました。
「わぁ…、なんだい? …すっごくきれいだね!」
「このいし、からすのすにあったぞ」
「なないろにひかってる…。これ、ボクにくれるの?」
「ああ、もちろん。"きぼう"だからな!」
むねをはってひなわんくんはとくいげにいいます。うれしいのかしっぽがふさふさとゆれています。
「ひなわんクン、これが"きぼう"ってどういうことかな?」
「こまえにゃ、ちょっとこっちきてみろ」
てをひかれてつれてこられたのは、さっき"きぼう"があったおいけのくぼみです。2ひきでみずのなかをのぞきこんでみました。
「ああっ!? き、きぼうがないよ、ひなわんクン!!」
「それはだな、からすのすにあったいしにおひさまのひかりがあたって、みずのなかに"きぼう"ができたんだ! きぼうのしょうたいは…ひかりだったんだよ」
「そうだったんだ! すごいよ、ひなわんクン!」
「おれがのぞいたときにひかりがさえぎられてきえたんじゃないか?」
「んぅうう…、でもせっかくキミがてにいれたきぼうをボクがもらうわけには…」
「いいからうけとれよ! おれはさいしょっからおまえにきぼうをあげるつもりでついてきたんだからな」
むりやりぎゅっとてにきぼうをおしこんだひなわんくんはそっぽをむきます。
「いいの?」とこまえにゃくんがこくびをかしげると、かれはすこしはずかしそうにしせんをおよがせつつ、「おう…」とこごえでかえしてきました。
「ありがとう、ひなわんクン…! ボクのたからものにするよ。いっしょうたいせつにするね!」
むずむずとおひげをうごかしているひなわんくんにありがとうをいって、こまえにゃくんはほっぺにちゅっときすをしました。
「な、な、ななななっ、こまえにゃ!?」
「ボク、キミにわたせるものをなにももってないから…。ごめんね、いやだった?」
「そんなわけないだろ!!」
なないろにひかるこいしをなくさないようだいじにもって、ひなわんくんとこまえにゃくんはなかよくてをつないでおうちにかえりました。

きょうのおはなしはこれでおしまいですが、あしたには2ひきはおなじようにどんぐりのきのしたでおはなしをすることでしょう。
つぎはどんなおはなしかたのしみですね。

めでたしめでたし

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CoCセッション後日談日狛
[簡単なあらすじ]
夜の小学校に居合わせた日向+狛枝+数人(苗木、松田、小泉、西園寺)は裏世界に飛ばされる。
しかし過去に起こった神隠しの真相を見事に導き出して、全員で元の世界に帰ってきたのだった。


季節は夏から秋に変わり、陽が落ちるのも徐々に早くなっていた。あの夏の終わりに起きた"南里初等学校の怪異"から1ヶ月が過ぎている。根無し草同然で各地を転々としていたボクは、あの怪異をキッカケに出会った日向クンと同居を始めた。彼はこの春に南里村立高校を卒業したばかりの少年で、今は小さいながら貿易関係の会社に勤めている。ボクも少しだけど事務のバイトをして彼を手伝っているよ。雀の涙ほどの給料だから生活は正直苦しい。でも日向クンがいてくれるだけでボクは幸せだから良いんだ。
ボクは定時で帰れる仕事だから大抵日向クンより先に家に着く。料理はちょっと苦手だけど頑張って作るようにはしていた。彼は優しいからどんなに焦げたお肉でも味付けを間違えた煮物でも「美味しいぞ」って残さず全部食べてくれる。彼のそういう所が好きだ。
手持無沙汰に点けたテレビではニュース番組がやっているらしく、女性キャスターが淡々と文面を読み上げていた。

――S区で起きた殺人事件の真相は依然として不明で、警察は厳戒態勢で捜査を進めています。容疑者と見られる男の特徴は長身かつ痩せ型の若い男で、白っぽい髪だったとの目撃情報も上がっています。被害者と面識があるのかどうかですが…――

ああ、この事件か。いい加減に警察は捜査の間違いに気付いてくれると良いんだけどなぁ…。ボクが泥棒に入った家で偶然殺人が起きていたから真犯人は他にいるんだけど、どうやら警察はボクを容疑者として追っているようだ。気が動転していたから証拠を残したまま出てきてしまったボクにも落ち度があるけどね。元々生きる意味なんてないも等しいゴミクズだったから、別に冤罪で捕まっても良かった…というのは昔の話。今は日向クンがいるから、絶対に捕まりたくない。

「ただいまー」
「おかえり、日向クン」
「お、何か良い匂いするな」
「ふふっ、今日は上手く出来たような気がするんだ!」
リビングのテーブルにコトンと皿を置きながら、ボクは帰ってきた日向クンに笑い掛ける。座布団に座って行儀良く「いただきます」と手を合わせた彼はまずは秋刀魚から箸を付けた。綺麗に骨を取り、大根おろしを乗せて一口。見る見る内に日向クンの表情が驚きへと変わる。
「…うん、美味しいぞ。狛枝、料理上手になったな」
「良かった…。キミにそう言ってもらえて嬉しいよ」
心の底から、嬉しい。平凡でつまらないごく普通の幸せだ。荒んでた頃のボクでは考えられない。人目を避けるようにして、疑心を抱えながら他人の物を盗んでいたのに、今といえばすっかり心を日向クンに盗まれてしまったのだ。…あはっ、何か我ながらクサいこと言ってるね。

テーブルのすぐ傍にはシングルベッド。同居をして数日経った夜に初めて交わって以来、ほぼ毎夜ボクと日向クンはこのベッドで愛し合っている。彼はとても初心で誰とも経験がなかった。まぁ、ボクに関しては言わずもがな…かな。恥ずかしそうに赤い顔で恐る恐るボクの体に触れる日向クンは、ボクにとってとても新鮮だった。一生懸命ボクを愛そうとする彼が可愛くて、自分色に染めたいと強く思ったんだ。だからボクの知ってる限りのことを日向クンにじっくり丁寧に教えてあげた。
最初こそボクがリードする形で致していたけど、1週間もすると立場は逆転してしまった。その…どう言葉にするか悩むんだけど、とにかく日向クンは…すごかった。昨夜も腰が立たなくなるまで突かれて、散々啼かされたのだ。今まで夜を共にした誰よりも激しく揺さぶられ、訳も分からないままボクは何度も絶頂を迎えた。全く若さとは恐ろしいなとしみじみしちゃうほどだね!

「ふぅ…、ご馳走様。狛枝、ありがとうな」
「わっ、今日も完食してくれたんだ。どういたしまして。明日も頑張るからね」
「いや、明日は俺が作るから」
すっと立ち上がって日向クンは食べた食器を片付ける。シンクに置いたそれを洗おうかとボクが近付くと彼は首を振った。どうやら自分で洗うと言っているようだ。
「疲れてるのにごめんね、日向クン」
「いや、良いんだ。俺…体力はある方だし、」
そこで中途半端に言葉を切ると、日向クンは少しおどおどと視線を泳がせた。何か言いたいことでもあるのかな? 大人しく言葉を待つボクだけれど、日向クンは何度か口を開いては閉じるを繰り返すだけだ。言いにくいことなのかな? もごもごと口の中で何かを言っている。でもボクは日向クンの言葉よりも早く、彼の視線の先を追った所にある"それ"にすぐに気付いた。
「………。今夜も、シたい…?」
「…えっ!? え、えええええ、あっ、いやっ、べ、べべべべっ別に…」
顔から湯気が出るほど真っ赤になって日向クンは捲し立てた。別に、だって…? キミは本当に嘘が下手だね。ボクがどうしてキミの考えてることを読めたのか分かるかな。さっきからベッドばっかりチラチラ見てたからだよ。頭のアンテナだってこんなに素直に反応してるのにね。
「あはっ、違ったかな…? 変なこと言って悪かったよ」
「ちがっ…えっと、その、いや…いやいや、狛枝、誤解なんだっ! 俺は…ッ」
「んぅううう、そっか…。ボクは、キミと…シたかったんだけど、今日は止めとこうね」
「ま、待ってくれ…!」
踵を返そうとするボクのシャツの裾を彼がくんっと引っ張った。振り返ると頬を赤く染めながらも迷いのない瞳で日向クンがボクを真っ直ぐに見つめてくる。ああ、ゾクゾクする…。キミに求められると、とても生きている実感が湧くんだ。良いよ、キミになら何をされても良い。唇を戦慄かせて何を言うでもない日向クンに、ボクは耳元で「しよっか…」と小さな声で囁いた。

滾る情欲をぶつけ合うような夜とは違い、静かに互いを慈しみ合うような…そんな夜だった。2度3度と精を吐き出した後、珍しく日向クンが眠いと言うのでボクは星明かりに照らされる彼の寝顔をぼんやりと眺めていた。眉間に皺を寄せてボクを責めたてる雄の彼も好きだけど、子供のようにあどけないこの寝顔も可愛らしくて好きだ。頬に指を滑らせて撫でると「うう…」と彼は呻いて僅かに身動いだ。
窓の外に煌めく無数の星…。あの夏の夜もこんな風に星の綺麗な夜だった。南里初等学校の図書室で読んだ絵本にあった『むらのかみさま』の挿絵を思い出して、ボクは1人鳥肌を立たせる。あの本のあらすじはこうだった。村の子供達に悪い病気が蔓延し、大人達は助けて下さいと神様にお願いした。すると神様はその願いを聞き入れて、体の弱い子供を体の丈夫な子供に取り替えてくれたという話…だったと思う。
「小泉さんの言う"おまじない"が神隠し…つまり未知なるものとの取り替えだとすると、」
ぽつりと零した独り言に背筋が逆立った。小学生の時におまじないを行った彼女は人ではないものに取り変わられていたのだろう。そこまでは大丈夫だ。ただそう理解すれば良いだけのこと。ボクにとって小泉さんは他人なのだから。でも…。

『俺もやったことあるけど。まあ残念ながら効果はなかったみたいだけどな』

夜の学校から脱出した後の彼の言葉が脳裏に蘇る。日向クンは、おまじないをしていた。彼もまた小泉さんと同じように取り変わられているのかもしれない。可能性は、ある。でもボクにそれを確かめる術はない。日向クンには取り替えられた自覚もない。彼は自分自身を「日向 創」と明確に認識しているのだ。そもそも入れ替わりなんてなかったのかもと一瞬考えが過ぎる。………。……本当に?

『ああ…あ、ああ…ちがうこないで、ちがう、おれは俺は俺のままで…いやだ』
『か、わらないで…かわらないで、代えないで』
『くるなよ、こないでくれよ…連れていかないで、おねがいだ たすけて』

奇想天外な光景を目撃し、正気を失った時の日向クンはこんなことを口走っていた。間違いなく深層心理の奥底で彼は取り替えられた事実を知っている。ボクの隣ですやすやと寝息を立てているこの少年はもしかしたら"日向クン"ではないのかもしれない。取り変わられた本当の彼は今も常世と現世の境を彷徨っているのだろうか…。そんな考えに耽っていると、眠っていた日向クンが突如として魘され始めた。
「うう、あ…、うぁ…く、るな、やめ、…ぐぐ…ッ」
「!? 日向クン…? 日向クン、日向クン!」
尋常じゃない苦しみ方だ。荒く息を吐きながらのたうち回る彼を、ボクは慌てて揺り起こす。名前を呼んで軽く頬を叩くと、漸く彼は薄らと目を開けた。何が起こったのか分かっていないらしく、ボクの顔や薄暗い室内を茫洋とした瞳で見回す。額からはじっとりと汗が浮かんでいて、顔色は青を通り越して真っ白になっていた。
「大丈夫? 日向クン…。酷く魘されていたよ」
「はぁっ…は、俺、ここ…いるよな? 俺はおれだ、よな? かわってない俺は何も代わってない俺は俺だから間違ってない間違ってない…」
「日向クン、落ち着いて。キミはここにいる。大丈夫、大丈夫…だから」
「違う、違う違う違う違うッ…!! 俺は本当に俺なのかっ? 取り替えられた? 俺は一体何だ!? なぁ、狛枝! こまえ、だ…」
「キミは、日向 創だよ…。間違いない、ボクが保証する。これから先も証明し続けてあげる。キミの存在を。だから、安心して眠って良いんだ…」
「う、あ…あ、こ、ま…えだ…、う、ふっ、うう…」
震える裸身を抱き寄せると、日向クンの涙がボクの肩にぽたぽた落ちるのが分かった。しゃくり上げながら嗚咽を漏らす様は普段の凛々しい彼とは全く違う。汗塗れの体を抱き締めてよしよしと頭を撫でてあげると、日向クンは糸の切れたマリオネットのようにガクンとボクの体に凭れ掛かった。筋肉質で重い彼の体を支えて、何とか布団に寝かせる。
「……ボクがついてるからね」
涙の跡を拭って、ボクは日向クンに布団を掛けてあげた。もしかしたら彼がボクを頼ってくれてるのは、ボク個人を好きとかではなく、"南里初等学校の怪異"を体験した者同士だからかもしれない。それでもボクは構わなかった。利用されても良いと感じるくらい、ボクは日向クンが好きなんだ。例えキミが人間にあるまじき存在だったとしても、ボクはずっと変わらずにキミの傍にいて愛し続けるよ。
「おやすみ、日向クン…」
ボクは日向クンの頬にそっとキスを落として、彼の温もりを感じながら静かに眠りについた。

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