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01.予備学科の正しい躾け方 成功例
「そこに座りなよ」
狛枝からコテージに呼び出された俺は、剣呑な目付きの彼に目の前に座るよう促された。人差し指で示されたそこはイスやソファなどといった客を持て成すような場所ではなく、木製のフローリングの硬い床だった。
「………。そこって…、もしかして床か?」
「そう言ってるのが分からない? …さすが、予備学科生。言葉の意味を理解出来ないなんて、絶望的だね」
「だけど…ソファだってあるのに、」
「予備学科のキミには地べたがお似合いだよ。あはっ、まさか超高校級であるボクに、才能すら持たないクズの予備学科が…同等の立場で物が言えるとでも思ってるのかな?」
不機嫌そうに眉を顰めた狛枝は「さっさとしてくれる?」と吐き捨てた。汚いものでも見るかのような狛枝の鋭い眼光が突き刺さる。…仕方ない、か。別にそう無理難題を吹っ掛けられている訳でもない。九頭龍辺りならすぐにでもキレてしまいそうだが、幸いにも俺の心には余裕があった。彼の言う通り、溜息を吐きつつもその場に腰を下ろす。
「日向クン、違うよ…。そうじゃないって」
俺が座った途端、狛枝のイライラしたような叱責の声が飛ぶ。
「誰がそんな風に足を崩して良いと言ったかな。自分の立場を本当に理解してるの? 予備学科クン」
「………」
あぐらではなく、正座しろと彼は言っているようだ。恐らく逆らっても意味はないだろう。俺は渋々足を組み替えて、正座をした。硬いフローリングが膝や足首の骨に当たり、痛みを訴えてくる。あまり長時間座っていたら、足が痺れてしまうだろう。俺は狛枝の話が短く済むことを密かに願いつつ、彼を見上げた。
「そうだよ。それで良い…」
狛枝は満足気に微笑した。俺とは違い、彼はベッドに腰掛けている。緩くウェーブの掛かった淡い色の髪には触れたことがないが、恐らく細くて柔らかい髪質なのだろう。普段人畜無害そうに下げられていた眉は今はキリッと吊り上がり、彼の気分が良くないことは目に見えて分かった。形の良い灰色の双眸は切れ長で、長い睫毛が周囲を縁取っていることもあり、女性的な印象を受ける。スッと通った鼻柱と小さめの鼻腔。薄い唇は綺麗な桜色で、品の良さを感じさせる。シミ1つないキメ細やかな肌は日焼けもしておらず、とても瑞々しく美しい。長い脚を優雅に組んで、こちらを見下げる様は正に女王然とした佇まいで、俺は何故だか背筋がゾクゾクしてしまった。

「で? どういう用事で俺を呼び出したんだよ」
正座を強要されて、気分が良いはずがない。自然と言葉に棘が帯びてしまう。狛枝は俺の問いに、更に眉間の皺を深くした。
「今日キミを呼び出したのはね、予備学科としての振る舞いを教えるためだよ」
「はぁ? 予備学科としての、振る舞い…?」
「うん。この修学旅行で超高校級でないのはキミ1人。他は雲の上にいると言っても過言でないくらい、身分が上なんだよ」
「…才能のあるなしで立場が違うなんて、」
「違うに決まってるじゃないか。所詮は予備学科…。卑しくも金で希望ヶ峰学園の生徒という肩書きを買ったんだ。身分が違うのは当然のことさ」
涼しい顔でニッコリと笑う狛枝に、俺はイライラが募る。思わずギリギリと膝の上に置かれた拳を握り締めた。
「今日の自由時間、キミは超高校級の王女ことソニアさんと楽しそうに話をしていたね」
「それがどうしたんだよ…。左右田に文句を言われる筋合いはあっても、お前にはないぞ!」
「……まだ自分の矮小さに気付いてないのかな? キミごときが気安く声を掛けて良い人じゃないんだよ、彼らは!!」
狛枝は強い口調で俺に指を突き付けた。何なんだよ、何で狛枝にそこまで言われなくちゃいけないんだよ! 予備学科だったのは確かにコンプレックスだ。だけどみんなに引け目を感じて、媚び諂うのは間違ってる。殺人が続いて疑心暗鬼になってるけど、みんな俺を仲間だって言ってくれたんだ。その気持ちに報いるためにも俺は彼らと等しくありたい。
「キミが声を掛けて良いのは…、そうだね、ゴミムシであるボクぐらいかな。それでもまだまだボクの方が上だけどね」
「俺はお前以外と喋っちゃいけないのか?」
「…はぁ、そう言ってるんじゃないか。キミのような希望にすらなれない憐れな人間の相手をしてあげようっていう、ボクの温情が分からないの?」
馬鹿にしたように嘲笑って、狛枝は呆れたように肩を竦める。蔑んだ視線は相変わらずだ。
人目を吸い寄せる容姿なのだろうか。狛枝には性別を感じさせない美しさがある。彫刻のように整った顔立ちもそうだが、そこから下の体もモデルのようなスタイルをしているのだ。襟繰りの開いた白いTシャツからは鎖骨が覗いていて、同性だというのに底知れない色気を感じる。胸元から腹までは肉付きが良くないのか、とても細い。だけど俺とは違うしなやかさが垣間見えて、何だか変な気分になってきた。
ベッドの上で狛枝はイライラと何度も脚を組み替えている。その挙動がやけに目についた。俺が正座している目線の先に、丁度彼の股間があるのだ。他意はないはずなのだが、そこから視線が動いてくれない。黒いズボンとボクサーパンツの向こうに、俺と同じ物がついている…。思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。説教されているのにも関わらず、俺の脳内にはそんな思考が浮かんでいる。
狛枝は怒っているだけで、興奮している訳ではない。だからもちろん股間は膨らんではいない。果たしてこの男は希望以外のもの―――人に対して、性欲というものを感じるのか。続けざまに降り注ぐ狛枝の叱咤を右から左に受け流しながら、俺はそんなことを考えた。少しばかり潔癖症のきらいがあるのは以前本人から聞いた。人に触れられるのも苦手だとも。狛枝を押し倒して、隠されている男の本能を刺激してやったら、彼はどんな表情で快感を追うのだろうか?
「………っ」
ヤバい。快楽に顔を歪ませた狛枝が頭にふと浮かんでしまった。実際に想像してみたら、思ったよりもエロいかもしれない。俺は湧いてくる興奮に小さく体を跳ねさせたが、狛枝は幸いにもそれに気付いていない。男の性欲のスイッチなんて、どこにあるのか分からない。それこそ不健康そうに弛んだ下っ腹や瑞々しさも感じない形の悪い尻にだって興奮してしまう。だけど、まさか男相手にまで興奮するなんて…。熱の集まる顔を狛枝に悟られまいと、俺はそっと俯いた。
「ねぇ、聞いてる? ボクはキミなんかのために、こうして時間を割いてまで話をしているんだよ?」
「あ、ああ…」
「ちょっとっ! 人が話をしている時は、相手の目を見なよ。キミさ、真面目に聞く気あるの?」
怒った狛枝の言葉が飛んでくるが、俺はそれどころじゃなかった。狛枝がその長い脚を組み替える度に、その中心にある部分が気になってしまう。じわじわと背中側から熱が迫り、俺の本能がピクリと鎌首を擡げた。
「…日向クン? 何 気持ち悪く身悶えしてるのかな…」
「えっ!? いや、何でもない。…何でもないぞ」
何でもない訳がない。熱の逃げ道を探そうにも興奮は止まらない。かなりヤバかった。男なのに色気が常にムンムンしている狛枝と、コテージという広くもない空間に2人きりでいるのだ。そう、2人きり…。そのシチュエーションに今更ながら気付いて、俺は更に熱が上がってしまう。それに伴って、足の間にあるペニスもムクムクと膨らんでいく。

完全に屹立してしまったそれを隠すべく、俺はさり気なく両手を股間の上に置いた。興奮を誤魔化そうと、俺はモジモジと体を捩らせたが無駄だった。持て余した快楽は行き場を失い、俺の中をゆっくりと彷徨っている。
「……日向クン、手をどかしてくれるかい?」
俺の怪しい挙動に狛枝は何かに気付いたのか、冷たい言葉を投げかけた。下を向いて視線を合わせまいとしている俺の顎を靴を脱いだ足の指先で掬い取り、スッと顔を上げさせる。1度も触れることを許されなかった狛枝の足先で、顔を上げられたという倒錯的な行為に、また脊髄を何かが駆け抜けた。彼の気だるげな微笑みにドキッとする。
「ほら、…その手をどけて、ボクに良く見せて?」
「あ……っ」
さっきとは打って変わって、子供をあやすような優しい声色だった。俺は狛枝に逆らうことが出来ず、言われるがまま手をそこからずらしてしまった。ズボンを押し上げているのは浅ましくも自己主張した俺自身。狛枝は一瞬目を丸くしたが、やがてズボンの下に勃起したペニスが収まっていることを確信したのか、ニヤリと唇を吊り上げた。
「出せ」
「え…?」
地を這うような低い声にも驚いたけど、狛枝らしからぬ粗野な言動にも驚いた。
「いいから、出しなよ」
憮然とした態度で、それを出すことを促される。俺は童貞だ。生まれてこの方、ペニスを誰かの前に曝け出したなんてことは1度もない。…今それを、狛枝に初めて見せるんだ。屈辱と興奮の混じった感情が支配する中、俺は諦めを抱えながら、ズボンのチャックに手を掛けた。ぐぐっとパンツの布地を押し上げていたそれが、ぶるりと外に顔を出す。狛枝はビクンと肩を揺らした。
「!? …ホント、予備学科ってのは最低だね。ボクに責め立てられて、そんなにしていたの…?」
不愉快さを滲ませた静かな狛枝の言葉を、俺は黙って聞いていた。彼に罵倒されながらも、俺のペニスははしたなく涎を垂らし、萎える気配を全く見せない。
「何てみっともない…。ボクに罵られて興奮するだなんて、予備学科は最悪の変態でクズでゲスだ! こんなもの…、こうしてあげるよ…!」
「ぅ…あッ!?」
強い譴責と共に、狛枝は足裏で俺のペニスを乱暴に踏み付ける。そしてぐりぐりと責め立て始めた。狛枝が素足で俺のペニスを弄っている。ペニスに触れる狛枝の足指の感覚に、俺は思わず熱い吐息を零した。
「うう…、あ、…ん、うぐ…っこま、え、だ…」
喘いでいる俺を見て、狛枝はせせら笑っている。腹に向かって強く押され、裏筋に指の腹が掠める。俺は痛みに顔を顰めた。痛いはずなのに、ペニスの勃起は収まらない。何だこれ…! いたいのに…。もう声にならない声しか出なかった。狛枝に見せる前から完全に勃起していたペニスは、これ以上ない痛みに悲鳴を上げているようだ。
「あれ? あれあれあれあれ? おかしいなぁ。ボクに踏まれてますます大きくなってない? キミのおちんちん…」
「…っぐ、う…あぁ…い…たぃ……!」
「嘘吐き。そんな悩ましげな顔で目を瞑ってるのに…。ねぇ、気持ち良いんでしょ?」
「これが…っ、気持ち良さそうな顔に見えるか…!?」
「ボクにはそう見えるよ。それにこっちは嫌そうにしてないみたいだ。濡れてきてる…」
鈴口から溢れた先走りが狛枝の足先に付着し、クチャクチャと厭らしい音を響かせている。ニコッと爽やかに微笑んだ狛枝が更にグッと足を倒した。俺のペニスには狛枝の体重が掛かり始め、俺は思わず引き攣った声を喉から出す。
「ひぐ…っ、うぁ……が…、やめ、ろ…!」
破裂してしまいそうだ。竿に浮かんだ血管がドクドクと脈打っている。痛みを堪えるようにきつく目を閉じていた所為か、目元の筋肉が痙攣してきていた。狛枝は相変わらず愉快そうに俺のペニスを踏ん付けている。「さすが予備学科」だの「はしたないね」だの「醜いなぁ」だの、侮辱の言葉を並べたてて俺を追い上げた。俺のペニスは天を仰いだままで、勢いは収まらない。
「はぁ…叱られているっていうのに、キミはこんな汚い物を無様に勃てて…。予備学科ってみんなそうなの?」
「し…、しらな……ッあぐっ…! ぅ、んん…」
「いっそのこと潰してあげようか? ふふっ、予備学科の子種なんて、誰も必要としないもんね」
「や、やめろ……、やめて…、くれ…っ! 頼む…」
狛枝にそう言われて、サーッと血の気が引いた。ガクガクと震え、涙ながらに俺は懇願する。彼の力加減少しで、本当に潰れてしまうかもしれない。狛枝は「冗談だよ」と楽しそうに声を弾ませ、俺の痴態に笑う。もう正座なんてしていられない。仕方なく俺は体勢を後ろに崩したが、狛枝は特に何も言わなかった。
重心を変え、緩急をつけられた狛枝の足先に悶えて、痛みすら快感へと昇華する。血液がドクドクと更に集まってきた。はぁ…、出したい…! 思いっ切り精液をぶちまけたい…っ。俺はその一心で、狛枝の足の動きを本能のままに追いかける。
「ちゃんと反省してる? 全部キミが悪いんだよ。ホント、恥知らずも良い所だ…」
「狛、枝…。そ、そんなこと、言われても…、あうぅッ、」
「素直に認めれば、まだ許せたのに…。予備学科の名に違わないクズの日向クン! しかも叱られて興奮するような変態だったなんて、信じられない!」
失望を露わにした狛枝は、尚も足の裏で俺のペニスをグリグリと踏みにじる。狛枝は鈴口をわざと優しく撫で回し、それに合わせてドクンと先走りが溢れ出た。亀頭やカリが擦れて、気持ちが良い。さっきよりも体重が掛かっていないからか、俺は余裕が出てきた。止め処なく零れる先走りが狛枝の足指を汚し、テラテラと妖しげな光を反射させていた。
「あ……ん、んッ…はぁ……っく、」
「何その声…。まさか気持ち良くなってるなんてこと、ないよね?」
安堵交じりの俺の喘ぎを聞いた狛枝はキッと睨み付けてくる。そして足に重心を傾けてきた。
「うぐ、ぐあああっ、あ、」
「汚い…。最悪だよ。脈打って、熱まで持って…。本当に汚い…!」
そうは言いつつ、狛枝の視線は俺のペニスに釘付けだった。灰色の美しい瞳が逸らされることなく、見つめている。狛枝が、見ている…。その事実に俺の体は更に気持ち良さを増した。先走りの粘液で狛枝の足が取っ掛かりもなく滑る。その所為か、足の動きにも力と速さが増してきていた。チュクチュクと水音が聴覚を刺激する。そんなにしたら…。
「恥ずかしくないの…!? こんなに、なる、なんて…っ!」
狛枝は顔を赤くしながら、ペニスを足でぐにぐにと踏む。その声色には興奮が混じっているように聞こえた。色気を含んだ高めの声が昂っていることに、狛枝自身気付いていないのかもしれない。はぁはぁ…と吐く息にも熱が籠っていて、とっても厭らしい。ふと視線を動かせば、狛枝の黒いズボンの中心は僅かに膨らんでいた。ああ、狛枝にも性欲はあるんだな…。どうでもいい疑問が1つ解消され、俺は何となくスッキリした気分になった。
「笑ってるだなんて、日向クンは余裕だね…。あはっ、これならどうかな?」
「あっ! んぐ、ぐ…ふぅ…あ、あああっ」
スッと上げた狛枝の長い美脚が、ペニスに容赦なくストンピングを掛けてくる。ヤバい、ヤバいヤバい…! ペニスのみならず、全身がビクビクと跳ねてしまう。狛枝はチッと舌打ちをして、声を荒げる。
「罵倒されて、侮辱されているのに…、快感を感じてるだって!? 気持ち悪い…。キミなんか必要ないんだよ!!」
「あっ、があああっ、ひぐっあ、ぐ、はぁ…っ」
俺、Mじゃなかったのに…何で感じてるんだ? 狛枝にペニスを踏まれて興奮するだなんて、おかしいだろ。そう理性は訴えていても、気持ち良いものは仕方ない。ペニスは狛枝から与えられる快楽を求めて、ひくついている。狛枝の足先から広がる気持ち良さは俺の全身を覆っていた。
「っ、こま、えだ…。もう、やめてくれ…っ、頼む…! 俺が、悪かった、から……っ」
「は? 許しを乞うなら、その薄汚い物を収めてからにしてくれないかな?」
「うぁ、うああああ…っ!」
「ボクのコテージなんだから、汚さないでよね。そんな汚い液体撒き散らされたら、臭いまでついて洒落にならないよ」
「ふぁ、あがっ、ぐ……あうう…!」
体が、疼く…。体内を彷徨っていた快楽は出口を求めて、暴れ回っている。狛枝の前で射精なんてしたくなかった。そんなの情けなさ過ぎるだろ? 俺は下腹部に力を込めたが、もう引っ込みがつかない所まで放出したい気持ちが押し迫っていた。滑らかな足先が先端の割れ目に触れて、俺はビクッとする。ああ、たまらない…。きもちいい…!
「こんな浅ましい物を屹立させて、島の中を歩けると思ってるの? ボク以外の超高校級の才能を持つみんながこれを見たら、どう思うか…分かってるのかな? キミの邪な思いでみんなを汚さないでくれる?」
「……っ俺は…そんな目で、みんなを見ていない……っ!」
「本当かな? 劣情や下心はないの? だったらこのみっともない姿は何だろうね」
「うっ、ひぁあああっ!」
痛みと気持ち良さ。相反する2つの感覚に、俺の体はビクンと大きく打ち震える。狛枝に乱暴に踏まれて、感じてしまっている。俺は頭がおかしいのだろうか。狛枝の言うことは強ち外れてはいない。俺は勃起したペニスを踏まれて、悦ぶような変態だったんだ。
「日向クン、ちゃんとボクを見てよ…。反省してるなら、早くこれを収めることだね!」
狛枝が足を無造作に動かす。その瞬間、足の皮膚の感触がぬるりとペニスに伝わった。ああ、纏わりついてきている…!
「あっあっ…、ああああああッ!!」
その感覚に我慢出来ず、俺は大きく喘ぎながら仰け反る。ドクッ! どぴゅううっ、びゅるるる、ドクン、びゅくびゅく、びゅうぅぅ…! 狛枝のコテージであるのも忘れ、俺は射精してしまった。
「なっ、……日向、クン!」
狛枝は戦慄き、唖然としたように俺のペニスを凝視している。無理もない。狛枝が足で弄り回していた先端から大量の白濁が飛び出してきたのだ。勢いよく発射された精液は俺のズボンのみならず、狛枝の足先をべっとりと汚していた。ドロドロと垂れるそれは狛枝の指の股を落ち、ダラダラと足裏を流れていく。
ひくりと口の端を上げた狛枝は、強張った表情でそれを見つめていた。足はピクリとも動かず、全身を硬直させている。足の甲には鳥肌が立っていた。
「何て不運なんだ…。こんな汚らしいものが、ボクの足に掛かるだなんて…!」
「ご、ごめん…。狛枝…」
射精後の気だるさもあって、俺は力の抜けた返事しか出来ない。何もかもが億劫だった。そんな俺を見た狛枝は真摯さが足りないのだと判断したらしく、ギリギリと唇を噛み締め、俺をひたすら罵倒してきた。
「気分が悪いよ…。最低と言っても良いくらいだね。しかも、何? キミのそれは…」
「は?」
狛枝は俺のペニスを見て、わなわなと震えている。怒りを含ませた彼の声に、俺がその視線を辿ると…。
「えっ!?」
そこには未だに大きくギンギンにそそり立った俺のペニスがあった。な、何でだ? いつもなら1回出したら、すぐ収まるのに。何でまだ勃起してるんだ?
「どうして…っ」
「それはボクが聞きたいよ。キミのおちんちん、一体どうなってるの? あれほど大量に出したのに、まだ性欲が有り余ってるってことだよね? ふんっ、…予備学科は下劣な欲求しか持ち合わせていないようだ」
忌々しげに狛枝はペニスを見下げる。しかも若干体を後ろに引いていた。俺は反論が出来ない。何て言えば良いのか言葉が見つからず俯いていると、白濁に汚れた狛枝の足が淫靡な動きで、俺のペニスを再び踏んだ。ぎゅーっと圧迫されて、俺は息を切らせる。
「やめ、やめてくれ…! お願いだから、踏まないで、く…っ」
「ねぇ、まだここから出るの? ねぇ、ねぇねぇねぇっ! どうなの? ほら…何か言ってよ、日向クン…!」
「…はぁ、あ、出る、出るからっ! あ、狛枝…っン、やめっ…!」
いくら乱暴に狛枝に踏まれようと、俺のペニスは勃起したままで。というか更に大きく膨らんで、鈴口を厭らしくパクパクと開閉させていた。サディスティックな笑みを浮かべた狛枝は、精液に塗れたペニスをクチュクチュと足裏で擦ってきた。
「ふふっ、まだ出るんだ…。予備学科は欲望しかないんだね。…次出したら、おしおきしちゃおうかな。ねぇ、日向クン」
「んっ、ふ、あ、狛枝、こまえだ、はぁん…ひっううう、」
イったばかりだというのに、刺激を与えられたペニスはビクビクと震えている。どうしよう、もうイきそうだ…!

本当に何なのだろう、この状況は。狛枝のコテージに呼び出されて、正座で説教を受けていたはずなのに…。俺は朦朧とする意識で、狛枝を見上げた。少し汗を掻いているのか、ふわふわの白い髪が頬に纏わりついている。頬を上気させ、薄く開いた唇からは短く切なげな吐息を零し、俺の情欲を更に煽る。チラチラと見える赤い舌が見えて、それにむしゃぶりつきたくて堪らなかった。
俺の股間がこんなになってるのは…お前の所為だよ、狛枝。男のクセにセクシーで、無意識に俺を誘うような素振りばっかり見せるから。出会った時から思ってた。何て綺麗な顔をしてるんだろうって。性欲に直結したのはついさっきだけど、それに嫌悪感は湧かなかった。無理矢理押さえつけて、めちゃくちゃにしてやりたい。
体は痩せてるんだろうな。乳首の色は何色なんだろう。…舐めてみたい。どこを触ったら感じるんだ? 首筋、胸、臍、尻、それとも…。俺のペニスを狛枝に突きたてたら、どんな声で啼くのか、どんな表情を見せるのか…。今与えられている刺激に身を任せながら、えげつない妄想に体を震わせる。
「日向クン? ちゃんと集中してくれないと困るよ。底辺である予備学科が、超高校級であるボクに足でしてもらえて、幸運でしょ?」
「はぁっ、あ、んんっ、狛枝……!」
精液が絡み付いて、さっきよりも刺激が強い。俺のペニスと狛枝の足を繋げるように精液が白い糸を引いていた。脚線美の向こうに狛枝の黒いズボンが見える。その股間は完全に勃起していた。あの中のボクサーパンツには染みが出来ているに違いない。もし目の前に狛枝のペニスが出されたら、俺は迷うことなく口に入れる。その味を知りたくて、涎がじわじわと溢れてきた。
「んっ、ああっ、こま、えだぁ、…や、もう……!」
「え…、もう? 早漏にしてもそれは早過ぎなんじゃない? 出したのついさっきだよ」
「…んぁッ、ご、ごめん…」
「まるで猿だね。仮に人間だと主張するなら、自制してみせてよ。…ボクが良いって言うまで、出しちゃダメだからね」
そう言われても出そうなものはどうしようもなかった。脂汗が全身に滲んで気持ちが悪かったが、すぐそこまで迫る快楽を感じてしまったら、そんなのどうでも良かった。尿道の内圧は限界を振り切っていて、我慢しようにも止められない。もう、すぐにでも射精しそうになっていた。狛枝を見つめて、俺はみっともなく呻く。
「ダメ…だ、もう…! また、出るぅ…!」
「そんなに出したいの? ボクは出すなって言ってるのに…。この汚らしい液体を、またボクの足に?」
「は…、はい……っ」
威圧的な灰色の瞳に、俺は思わず敬語になってしまった。
「良いよ。今回は特別だ。その汚辱にまみれたおちんちんから、精液を出すことを許してあげる」
狛枝の唇から漏れる妖艶な囁きに、俺はビクンビクンと全身を震わせる。狛枝はすぐに足を激しく動かし始めた。ペニスをリズミカルに擦り上げ、その刺激で先走りが後から後から流れてくる。
「日向クン、今のキミの顔…最高だよ。何て締まりのない顔。蕩けそうだね…」
「はぁっ、あっあっ、はひっんぁあっああんっんんっ」
「ボクの足に掛けたいんでしょ? 不浄な欲望が凝縮された精液を。あはっ、ほら…出して?」
「おっ、うぁっ、うわああああっ……!!」
堪え切れない気持ち良さに、俺の思考は真っ白に弾け飛ぶ。ビュクンッ、びゅっびゅー、どぷっ! びゅうううっびゅるっびゅぷぷっ!! 絶叫と共に、俺は2度目の精を吐き出した。びゅるびゅると射精された精子が、狛枝の足を更に汚す。それをじっと見つめていた狛枝は呆れたように眉を下げた。そして吐き捨てるように呟く。
「おぞましい…。おちんちん踏まれて、気持ち良くなるだなんて。ボクには理解出来ないよ」
「はっ、はぁ…はぁ…んく…、ハァ」
俺はただ短く息を吐くしか出来なかった。他のことを考える余裕がない。でも何度か深呼吸をしたら、段々と頭が冴えてきた。少しだけ冷静になって、俺は自分の有様を改めてその目に映す。…酷かった。大量の精液が股間を汚し、穿いていたズボンも1度目に出した精液で白くなっていた。狛枝の足先にも同じく精液が纏わりついている。美しい彼の足に俺の精液が付着しているだなんて何とも背徳的な光景だったが、さすがに2回も出したのでペニスは落ち着いたままだった。
…そうだ、2回も出したんだ。思いっ切りペニスを踏まれて。俺ってやっぱりマゾなのか? 結構ショックだ。打ちひしがれている俺を余所に、狛枝は傍にあったタオルで足についた俺の精液を拭うと、片足を上げたままベッドから降りた。そして立ち上がれなくなっている俺に冷たい視線を投げる。
「何呆けてるのかな。さっさと来なよ。そのままで外に出れると思ってるの?」
「…へ?」
「そんな汚らしいものを、他のみんなに見せるだなんて…ボクが許さないよ」
「あ、ああ」
「いいかい? これに懲りたら、予備学科として立場を弁えて行動することだね。さもないとまた同じような屈辱を与えてあげるから」
「………」
嫌みたっぷりな言葉がぶつけられる。えーっと、それって…。つまり他の奴らと楽しく喋ってたら、狛枝にまた同じようなことをされるってことか…? いや、決して俺はマゾじゃないんだけど! それでもさっきのは気持ち良かったし…。ようやく立ち上がった俺を、同じ高さの視線で狛枝は睨んできた。見目麗しい灰色の瞳に俺はドキドキする。
狛枝はだるそうに髪を掻き上げた後、シャワールームへと行ってしまった。俺はその背中を変に意識しつつも、その後を追うのだった。

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