// Call of Cthulhu //

09.恋人
「…風呂って気持ち良いよな。何だか少しだけ、日常に戻ったみたいだ」
はぁと吐いた息が白く空中へ消えていく。静かなシャワールームにぴちゃんという水の滴る音がやけに響いた。
日向のコテージの、真っ白なシャワールーム。湯船に入った日向に、抱きつくようにして狛枝が首に腕を回している。日向の肩口に擦りつけるように頭を寄せ、しな垂れかかる狛枝。その甘えるような仕草に、「こいつ、俺のこと嫌いなんじゃなかったっけ?」と日向は頭の隅で考える。
「日向クン…」
「……はぁ、何だよ」
狛枝は少しだけ顔を上げ、至近距離で日向を見つめた。しかし日向の返事に答えないまま、うっとりと夢見心地に灰色の瞳を閉じると、また日向の肩口に顔を埋める。「予備学科のクセに」と蔑んだのと同じ口で、名前を呼び掛けるその声は日向を慈しんでいるように聞こえた。
「絶望も、キミの才能も…全部嘘だったら、良かった。ボクは、キミと一緒に…」
「……? 狛枝?」
その続きを言うことなく、ざばっと湯から狛枝が立ち上がる。男にしては華奢で白過ぎる体。性別を超えた美しさに日向はしばし見惚れてしまった。髪を掻き上げた狛枝は汚いものでも見るかのように、日向を蔑視している。いつか見た狂気に染まる爛々と光る瞳だ。
「? こま、……っ、がっ…ぐ、」
気付いた時には遅かった。自分と同じ温度の両手が日向の首に絡まり、物凄い力で圧迫してくる。手足をばたつかせるも湯の中では動きは鈍い。何より酸素が回らず意識が朦朧とする。日向は抵抗する間もなく深く深く…沈んでいった。


……
………

セッションの時間は夜になり、一息つけると思っていた矢先のことだった。狛枝がカットしても良いシーンのロールプレイを提案してきたことに日向は不安を隠せない。何をするつもりなのだろう。絶対に何かを企んでいる。警戒心を露わにする日向を弄ぶように、狛枝はクスリと妖艶に微笑んでみせた。そんな2人のやりとりも露知らず、苗木は真面目に進行役としてシナリオを読み進めている。


【苗木 誠/GM】
『日向 創と狛枝 凪斗は1時間掛けて、狛枝 凪斗の探偵事務所に辿り着きました。事務所は2階建ての小奇麗なビルで、1階部分は依頼を受ける際に使う応接室、執務を行うオフィスがあります。トイレ、収納スペース、簡易キッチンも付属しているゆったりとした空間です。
2階部分は外にある階段を上った入り口から入ります。広々としたリビングにはあまり物がなく、大きなソファーとローテーブルがあるだけです。カウンターキッチン、トイレ、シャワールーム、洗面所の他に、6畳の寝室が1部屋あります』


「何だ、これ…。かなり大層な事務所じゃないか!」
モニタに表示された2階建ての事務所の見取り図に、日向は衝撃を受けた。苗木はその反応に、『ふふっ』と楽しそうに笑う。
『持っている資料の中で1番大きな間取りにしたんだよ。それくらいでも不思議じゃない経歴だからね』
「ボクの恋人である日向クンなら、もちろんここに来るのは初めてじゃないよね? 2人で2階に上がるよ」
いつでもダイスロールをする準備は出来ている。日向の手には10面ダイスが2つ握られていた。もちろんすぐに<こぶし>を使えるようにである。初心者ながら、ルールはキチンと把握しているつもりだ。神話生物と対峙するのとは違う意味で、日向は緊張に身を固くする。


【苗木 誠/GM】
『では2人は2階に上がります。七海 千秋が探偵事務所に到着するには、まだ1時間ほど掛かります』
【狛枝 凪斗/PL3】
「さて、日向クン。時間がないよ…。早く済ませてしまおう。ね?」
【日向 創/PL1】
「は? …え、何のことだよ。時間がないって、どういう」
【狛枝 凪斗/PL3】
「もちろん七海さんがここに来る前に、だよ。恋人同士の夜の営み…。当然だよね?」


「ひっ、ひいいいいいいい!!」
狛枝が突然始めたとんでもないロールプレイに、日向は引き攣った悲鳴を上げた。額から冷や汗がダラダラと零れて、背中にシャツがくっつき気持ちが悪い。体全体が瞬時に冷え切って、鳥肌が立つ。日向は席から勢い良く立ち上がり、バンッとテーブルを叩いた。
「GM!! 何だよ、これ! 全然セッションに関係ないじゃないか!」
『あ、うん。そうみたい、だね。あんまり真剣に言うものだから、事件に関わる話をするのかと思ってたよ』
「七海が来る時間まで飛ばせないか!?」
『ごめん。1度許可しちゃったから無理かも!』
てへっと苗木は舌を出す。可愛いけど、ちょっとムカつく。ギリギリと歯を食い縛りながら、日向は力なく席に座る。恋人設定を前面に出してきやがった。しかもダイスロールですらなかった。これをロールプレイで切り抜けろというのか…。日向は手の内のダイスを強く握り締める。たかがロールプレイ、されどロールプレイ。この恋人ごっこが日向のリアルSAN値を削るのに十分なことは、序盤の小泉に対する恋人宣言で身を持って体験していた。
「日向クン、これはゲームなんだよ? ちょっと茶番に付き合ってくれるくらい良いじゃないか」
「どこが茶番だ! 俺にとっては男の沽券に関わるんだぞ!」
「沽券にも股間にも関わるよね。……あはっ、ボク今上手いこと言ったかな。日向クン、褒めて!」
「バカ言ってんじゃねぇよ!!」
「まぁまぁお2人とも、落ち着こうよ。日向くん、こういう息抜きも大事…だと思うよ」
俺にとっては息抜きじゃない。日向はそう言いたかったが、七海に文句を言っても仕方がない。舌打ちをしながら、狛枝に「どうするんだよ」と射殺す勢いで睨み付ける。その敵意を込めた視線も彼の前では快感にしかならなかったが。ゾクゾクと身悶えしながら、はぁはぁと荒い息をつく狛枝。やっとのことで呼吸を整えると、何やら1枚の紙を取り出した。何が何だか分からず、日向はそれを受け取る。
「? 何だこれ…、……げっ」
「これは<恋人>の行動を決めるロールだよ! 1時間だから1ラウンドが限界かな」
日向は頭がカッと熱くなるのを感じた。とにかく酷かったのだ。日向の手からパラリと滑り落ちた紙を隣の苗木が拾い上げる。最初はきょとんとした表情をしていたが、内容を読み進めていく内に苗木はどんどん顔を赤らめていく。チラリと日向に視線を寄こしてから、モジモジと居心地悪そうにした。無理もない。狛枝の要求は常軌を逸していた。

○夜の恋人達(ハウスルール)
 1D6で出た目が1の場合 → 日向クンと手を繋ぐ
 1D6で出た目が2の場合 → 日向クンと抱き合う
 1D6で出た目が3の場合 → 日向クンとキスをする
 1D6で出た目が4の場合 → 日向クンとお風呂に入る
 1D6で出た目が5の場合 → 日向クンとペロペロ
 1D6で出た目が6の場合 → 日向クンとセックス

『うーん、恋人設定だから変ではないかな…』
シナリオに変更はなく、GM的には何の問題もないから言えることなのだろう。だが日向は違う。狛枝との恋人ごっこを人前で演じるのは限りなく拷問に近かった。
「ロールプレイ上はそうでも、俺と狛枝は友達なんだよ!! 最後の絶対おかしいだろ!!!」
『友達だったら、途中からおかしいと思うんだけど…。そこはツッコまない方が良いのかな?』
「そうだよね。どっちが突っ込む方か決めないとね。ボクはどっちでもいいよ! うぇるかむ、日向クン」
「き、気持ち悪いいぃぃぃいいっ、神話生物より怖いぞ、こいつ!!」
両手を広げてハグを求める狛枝。それを見て、頭から足の爪先までゾクゾクと悪寒が走り、日向の体はブルブルと震え出す。何としてでも逃げ切らないといけない。ゴクリと生唾を飲み込んだ日向は紫色の6面ダイスを手に取った。
『律義にロールしなくてもいいのに…』
そんな苗木の呟きを聞くこともなく、日向は覚悟を決めて、ダイスをテーブルに転がす。

<恋人>
探索者名  範囲   _出目
日向 創_ (1D6) → 4 (お風呂)

「………」
すごく微妙な目が出てしまった。しかしロールプレイ次第では、かなり健全な内容に持っていけるだろう。日向はしばし考え込み、狛枝を煙に巻く算段を頭の中で組み立てていく。そんな日向を見た狛枝は嘲笑うように、口元を歪めた。彼の不吉な笑みに、日向は得体の知れない不気味さを感じる。ある意味、小泉の消失より恐ろしい。
「キミは全然分かっていないよね。これはTRPG…、テーブルトークなんだよ? 如何に綿密な作戦を立てても、言葉で切り返されてしまえば無意味さ」
「狛枝…? 何言ってんだ?」
「GM、日向クンとボクは2人とも服を脱いで、仲 睦 ま じ く シャワールームへ向かうよ…」
「っ!?」
やられた! 狛枝の言葉を聞いた瞬間、日向は悟った。仲睦まじく、という部分を強調した物言い。これだけで日向が嫌がっていないことを暗にGMに主張しているのだ。恋人同士なのだからその表現は寧ろ自然だ。しかし最初から素っ気なくしているのと、仲良くしているのとでは、その後のロールプレイに流れに違いが出てくる。言うなれば、仲良くしている方が恋人っぽい展開に運びやすい。苗木はもちろんそのロールプレイに従う。


【苗木 誠/GM】
『裸になった2人は仲良さげにシャワールームへ向かいます』
【狛枝 凪斗/PL3】
「日向クン、ボクがキミの体を隅々余す所なく洗ってあげるからね。もちろん素手で。ふふふっ」
【日向 創/PL1】
「狛枝。それはありがたいが、結構だ。…ダメって意味の結構だからな!」


言葉で切り返すならこれしかない。どう展開するかは分からないが、そのまま狛枝の思惑に乗ってしまうのは癪だった。
「…ふぅん、仲睦まじいボクらなのに断るの? それは変だよね」
両肘を突き、顔の前で指を絡ませた狛枝がクスクスと笑う。その声には確実に攻撃性が籠っていた。狛枝は日向を逃すつもりはないようだ。しかし日向にも意地がある。彼を論破しなければ、恋人ごっこと言う名の拷問を掻い潜ることなど出来ない。
「いや、変じゃないぞ。恋人同士でも恥じらいってものがある。シャワールームは照明が明るくて、互いの体が丸見えだ。更に相手に体を洗われるという羞恥心…。それを狛枝に伝えるんだ。GM、狛枝に<説得>だ」
「!? …な、に」
『了解。じゃあダイスを振ってね。いやぁ、熱い戦いだね!』
日向と狛枝の競り合いに、苗木はのほほんとした口調で感想を言っている。七海は七海で「ほぅほぅ」と感心しているかのように真面目な顔をしていた。外野が何を言おうが、今は狛枝との戦いに集中するべきだ。日向は慎重に白と黒の10面ダイスをテーブルに転がす。

<説得>
探索者名  技能   出目  判定
日向 創_ (70) → 50  [成功]

「よっしゃ、成功だ!!」
日向は思わずイスから立ち上がり、ガッツポーズを決めた。もしかしたら今までのロール成功の中で1番嬉しいかもしれない。全身でその喜びを噛み締める。日向の様子を見ていた狛枝はニコニコと笑っていたが、こめかみには青筋が浮かんでいる。組んでいる両手の指には力が入り、肌には爪の食い込んだ後がいくつも並んでいた。
「やるねぇ…。キミの柔肌に触れられないというのはかなりガッカリだけど、ボクは今最っ高にワクワクしているよ…!」
瞳をぐるぐるさせながら、狛枝はヒクヒクと口角を吊り上げる。最初の学級裁判で見せたような狂気的な表情が見え隠れし、口の端からはツッと涎が垂れた。


【日向 創/PL1】
「ここは明るいし、そんなに見られたくない。それに隅々まで洗うだなんて…、は、恥ずかしいだろ…っ!」
【苗木 誠/GM】
『日向 創は己の体を隠すようにして、狛枝 凪斗の視線から逃れます。恥じらいに顔を赤くし、身を捩る恋人の懇願に狛枝 凪斗は渋々その願いを受け入れました』
【狛枝 凪斗/PL3】
「ふああああぁっ!! 日向クンに可愛くお願いされちゃったら、聞き入れない訳にいかないよ!!」


「うう…、日向クン。そんなにボクのことが嫌いなのかい?」
「く…っ!」
うるうるとした狛枝の瞳からは、やがてポロリと涙が零れていった。泣くほどのことなのか。縋るように見つめてくる狛枝に、日向は言葉を詰まらせる。嫌いという訳ではない。ただ人前で恋人同士のロールプレイをするのが恥ずかしいのだ。しかしそれを言ってしまえば、狛枝に付け入れられるのは目に見えていた。狛枝はゴシゴシと深緑色のコートの裾で乱暴に涙を拭く。目元は真っ赤になり、コートには涙の染みが出来ていた。
拒否し過ぎなのだろうか? 日向は考える。厳しかったかもしれない。恋人らしいことを少しは許すべきか。
「一緒に湯船に浸かるぐらいは…その、良いと思う。だけど体に不必要に触るなよ」
「……抱き合うのもダメ?」
「〜〜〜っ! 分かった。でもそこまでだからな! それ以上のことしたら、狛枝に<こぶし>だ!」
実力行使も厭わない。ビシッと日向が人差し指を突き付けると、狛枝はビクッと体を跳ねさせたが、段々と表情筋が緩み、蕩けるような笑顔を見せた。本当に幸せそうに、笑っている。
「ありがとう、日向クン…。やっぱりボクはキミが好きだよ」
「っ!!」
日向は彼の表情に、ドキッとしてしまった。完全な不意打ちだった。涙は引いたものの、灰色の瞳はまだ少しだけ潤んでいる。心がざわつくような感覚に日向は戸惑った。セッションが始まる前に、図書館の扉付近で会話した時と同じ感じだ。狛枝のことを真っ直ぐに見れない。恐る恐る横目に見た彼の顔はとても嬉しそうで。それを見た日向の心臓はトクンと擽ったい音を鳴らす。
「すごいなぁ、狛枝くん。既にリアル言いくるめをマスターしているんだね。ふぁあ〜」
『ボクの記憶が正しければ、…これってクトゥルフ神話TRPGだったかと思うんだけど。あれ…?』
七海はあくびを噛み殺しながら、そんな感想を漏らした。その斜め前にいる苗木は何とも言えない表情で、モニタ前に立ち尽くしている。


【苗木 誠/GM】
『日向 創と狛枝 凪斗はそれぞれシャワーで体を洗い、湯船に浸かることにしました。先に入った日向 創に狛枝 凪斗は正面から向かい合い、その肩口に腕を回します』
【狛枝 凪斗/PL3】
「今日は色々なことがあったね…。一体何だったんだろう。ボク、頭が混乱してきたよ」
【日向 創/PL1】
「もう気にするな。俺だって七海だっているんだから。明日には病院に行くんだし、何かしら分かるだろ」


「って言って、狛枝の腰に腕を添える」
日向からのロールプレイの指示に、苗木は『えっ!?』と上擦った声を出し、日向を凝視する。
『日向クン…っ、それで良いの? 無理しなくって良いんだよ!?』
苗木の言葉に、日向は首を傾げる。彼の言う無理などしていない。そのことを告げると、苗木は『………あ、…うん』と神妙な面持ちでそれに頷く。そして『日向クンって何考えてるんだろう…』と誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。


【苗木 誠/GM】
『日向 創は安心させるようにそう言い、狛枝 凪斗の腰に自身の腕を回します。体を密着させた2人はしばらくそのまま抱き合っていました。温かいお湯が凝り固まった体を解し、溜まった疲れを癒していきます』
【日向 創/PL1】
「こうしていると、あんな事件があったなんて忘れそうだな。普通の日常みたいにすごく平和だ」
【狛枝 凪斗/PL3】
「そうだね。全部嘘だったら良いのに。そうすれば怪異に怯えることなく、キミとずっと一緒にいられる…」


「………」
狛枝のロールプレイを聞いて、日向はふとコロシアイ修学旅行のことを思い出した。狛枝と過ごした最後の夜だ。自分が予備学科だったことがバレて、ドッキリハウスから脱出したその日。狛枝にコテージを強襲され、好きなように体を弄られて日向は果てた。その後成り行きで一緒に風呂に入ることになったのだ。吐精後の気だるい体を引き摺って、湯船に2人で浸かり、今のような会話をした気がする。
―――「…風呂って気持ち良いよな。何だか少しだけ、日常に戻ったみたいだ」
―――「絶望も、キミの才能も…全部嘘だったら、良かった。ボクは、キミと一緒に…」
その言葉の直後に泣き顔の狛枝に首を絞められて、殺されそうになった。鼻や口から湯がこぼごぼと容赦なく入り込み、息も出来ずに苦しくて、本当に死ぬかと思った。しかし実際は気を失っただけで、窓から射した朝日で目を覚ましたのだ。コテージからは狛枝の姿は消えていた。それ以来、コロシアイ修学旅行ではまともに会話をすることなく、狛枝は自殺した。
「日向クン?」
気遣うような揺らぐ声が聞こえ、日向はハッと顔を上げた。優しい木目調の落ち着いた雰囲気の広い図書館。周囲には自分に注目する6つの目がある。中でも灰色の瞳は心許なげに細められている。それを見て、日向は思う。あの時の狛枝はどんな気持ちだったのだろうかと。じっと言葉を待つ狛枝に、日向は安心させるように表情を緩める。
「何でもないぞ。…大丈夫だ」
「…ねぇ、日向クン。ボクとキミって一緒にお風呂に入ったことあったっけ?」
「……何で、そんなこと聞くんだ…?」
「今のロールプレイみたいな会話を、以前にキミとしたような気がして…」
「………」
伏し目がちに考え込む狛枝に、日向の心臓はバクバクとうるさく鳴り響く。もしかして、もしかして…。彼はコロシアイ修学旅行の記憶を蘇らせたのではないか? 狛枝は記憶を篩いにかけているのか、灰色の瞳を閉じている。もし彼が全てを思い出したらどうなるのだろう? 混乱し何も分からなくなるか、果てや日向や七海を殺しに来るか。可能性は十分考えられる。だが最終的にそうなるかもしれないというだけで、狛枝がコロシアイ修学旅行の記憶を思い出すこと自体、日向にはどうすることも出来ない。
「いや…? 俺は覚えてないけど」
「…うーん。気の所為、かな? 何となくそんな気がしちゃって。変なこと言ってごめんね、日向クン」
日向の否定に、照れるように「あははっ」と軽く笑った狛枝は、苗木に続きを促した。


【苗木 誠/GM】
『日向 創と狛枝 凪斗はシャワールームから出て、服を着ました。帰宅してから1時間ほど経過しています。そして2人が身繕いをしているところに、ピンポンとインターフォンが鳴りました』
【日向 創/PL1】
「七海だろうな。俺が出るよ」
【狛枝 凪斗/PL3】
「うん。頼むね、日向クン」
【七海 千秋/PL2】
「こんばんはー。お邪魔します。ごめんね。今日はお言葉に甘えて、泊めてもらうことにするよ」
【苗木 誠/GM】
『日向 創が玄関を開けた先にいたのは七海 千秋でした。彼女を迎い入れた日向 創は室内に案内します。探偵事務所に探索者3人が揃いました』


『やっと集合だね。そういえば七海さんは何を取りに行ったの?』
「拳銃と弾、それから手錠をね。友達と会う時はさすがに持ってないだろうから、何が起こっても良いように念のため…」
七海は言いながら、書き加えたシートを苗木に見せる。
『S&W M3913か…。日本警察でもこのモデルは正式採用されてるね。了解したよ』
苗木は七海の探索者シートを確認し、頷いた。ぽわーっとしているようで、七海も色々考えているんだなと日向は感心した。彼女は狛枝と違い、<拳銃>の技能を持っている。万一に神話生物と対峙した時のために持ってきたのだろう。戦闘員が自分以外にいるというのは、1人よりも安心感がある。

『ここで全員の持ち物チェックしておこうか。明日出掛ける時に持っていく物を探索者シートに書いて、ボクに見せてくれる?』
持っていく物…。自分が出掛ける時は財布と携帯電話くらいしか持っていかない。その2つを書いて、日向はふと手を止めた。後は何か必要だろうか? 素手で戦うから武器は必要ない。考えあぐねた末、筆記用具とだけ記入する。全員が探索者シートに記入出来たようで、モニタにそれぞれの所持品が表示される。

[所持品]
日向 創_:財布、携帯電話、筆記用具
七海 千秋:身分証、拳銃、弾、手錠、財布、携帯電話
狛枝 凪斗:携帯電話、救急キット、財布

『えっと、最後に…3人がそれぞれどこで寝たか教えてくれないかな?』
苗木に質問され、日向達はモニタに表示されている探偵事務所の見取り図に視線をやる。広い事務所ではあるが、3人で床に川の字になって寝る訳にもいかない。
「狛枝は自分の寝室で良いだろ? 後は俺と七海だけど…」
「あれっ、日向クンはボクと一緒のベッドで寝るんじゃないの?」
意外そうに表情を崩し、日向を見やる狛枝。やっと下らない茶番を終わらせることが出来たのに、これ以上狛枝に振り回されては堪らない。溜息を吐いた日向は、棘のある視線を狛枝にぶつける。
「狛枝! お前ちょっとは真面目にやれよ。あー、七海はお客さんだからリビングに布団敷けば良いか。で、俺はどうするかな。リビングで七海と一緒に寝る訳にもいかないし。…あ、1階の応接室にソファーあるな。俺はここで寝るぞ。GM、これで良いか?」
我ながら妥当な配置をしたと日向は大きく頷いた。七海もそれで良いらしく、その顔には同意の2文字が浮かんでいる。狛枝だけは異論があるのか、上目遣いで日向に哀訴の色を主張する。そして甘い声で、「日向クゥン…」と呼び掛けた。
「そんな目で見てもダメだ。もちろん夜這いもするなよ」
「……はい」
日向に釘を刺され、ぐったりと机に倒れ込む狛枝。彼が犬だったら、耳としっぽはしょんぼりと垂れていたことだろう。

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10.分岐
【苗木 誠/GM】
『ただ今の時刻は夜の0時前。探索者達はそれぞれ自分の寝場所で就寝しました』


『ふぅ、ここでやっと1日が終わったね。みんなお疲れ様。休憩にしようか』
一仕事終えたようなスッキリとした顔で苗木が告げる。漸く一息つける。日向は体をぐっと反らせて、筋肉を解した。苗木が『お待たせ』と言いながら用意してきたのは、持ち運び出来る大きさの簡易ドリンクバーと様々な種類のお菓子だった。久しぶりに感じる安寧な空気に日向も自然と顔が綻ぶ。それは七海や狛枝も同じだった。
『日向クンの好きな草餅もあるんだよ! 飲み物は…、ほうじ茶が良いかな?』
「草餅!! わざわざ用意してくれたのか!? 苗木…っ、ありがとな!!」
「苗木くん、ミルクティーってある?」
『もちろんあるよ。…はい、七海さん。狛枝クンは何にする?』
「うーん、ボクはコーヒーで」
大好きな草餅を頬張り、ほうじ茶を啜る。口に広がる馴染んだ味に、自然と肩の力も抜けていく。「中々スリリングだったね」と狛枝が言えば、「それがクトゥルフなのですっ」と七海が興奮気味に返す。いつものやりとりに日向はクスリと笑みを零す。苗木もその輪に入り、ニコニコとしながらクッキーを摘まんでいる。しかし反対側の手には何故かダイスがあった。隣にいた日向はそれが無性に気になってしまう。
「…?」
苗木がさり気なく転がしたダイスの音は談笑に混じり、ほとんど音が聞こえない。しかし出た目を確認した苗木は、傍から見ても明らかに顔色が変わった。
「どうかしたの? …苗木クン」
『あ、ううん。何でもないよ。それよりこのクッキー、すごくおいしいんだ。食べてみる?』
狛枝の問いかけを誤魔化すようにかわす苗木に、日向は少し嫌な予感がした。ダイスロールは探索者に限らず、GMがシナリオで起こる現象や物語の分岐を判定する時にも行う。GMである苗木はそう言っていた。苗木に気付かれないよう、日向は転がされた黒い10面ダイスの目をチラリと横目に見る。その数字は、0だった。



『さて名残惜しいけど、休憩はお終いだよ。シーンを再開しようか』
苗木はパンッと手を叩いて、日向と七海の目を確認する。30分ほどの休憩が終わり、良い感じに腹も満たされている。簡易ドリンクバーやお菓子の並んだ皿は他のテーブルへ撤去されてしまった。テーブルの上にはダイスと筆記用具、それぞれの探索者シートだけが置かれている。テーブル周りはほとんど休憩前と変わっていない。ただある1点だけを除いては…。
「…苗木、狛枝がまだ来てないけど」
日向の斜め前が空席になっている。狛枝がどこに行ったかと辺りをぐるりと見回せば、図書館の2階に見慣れた白い髪と深緑色のコートが目についた。呼びに行こうかと席を立ち掛ける日向を、苗木は『ちょっと待って、日向クン』と静止した。
「? 何で止めるんだよ、苗木」
『ここからは日向クンと七海さんのシーンなんだ。狛枝クンのシーンは別にするからこのままでお願いするよ』
「そう、なのか」
シーンを別に? クトゥルフ神話TRPGのセッションにはこういうこともあるのか。日向は上方を見上げる。狛枝はこちらの様子を気にすることもなく、ずらりと並べられた本棚に向かい、本を吟味していた。セッション内の探偵事務所には探索者3人が一緒にいるはずだ。これから進めるのは一夜明けた朝のシーン。狛枝が何かしらのアクションを1人で起こしているのかもしれない。少し引っ掛かったが、そういうものかと自分を納得させ、日向はイスに腰を下ろした。

『まずは日向クンから。キミは探偵事務所1階の応接室で目を覚ます。時刻は朝の7時だ。これからどうする?』
「そうだな、とりあえず顔を洗う。…七海は寝起きが悪いからな。起こしに2階へ行くぞ」
修学旅行で罪木と一緒に七海をコテージまで起こしに行ったことがある。その時の彼女は起こしても30分くらいボーっとしていた。狛枝も低血圧らしく朝は弱い方だが、七海に比べればまだ可愛い方だった。なので先に七海を起こした方が良いかもしれないと日向は思ったのだ。
モニタには青空が広がっており、太陽が真っ白な光を四方八方に向けている。気持ちの良い晴天だ。


【苗木 誠/GM】
『やや薄暗いリビングの中央には布団が敷かれ、七海 千秋が気持ち良さそうに眠っています。雨戸とカーテンを全て開け、空気の入れ替えをした日向 創は彼女に声を掛けました』
【日向 創/PL1】
「七海、おはよう。……おい、七海ー? 起きろ。もう朝だぞ」
【七海 千秋/PL2】
「うう〜ん、…むにゃ、………ふぁ、ひなた、くん? おはよ、………ぐー」
【日向 創/PL1】
「こら、二度寝はダメだからな。洗面所で顔洗ってこい。俺朝メシ作ってるから、その間に狛枝起こしてきてくれ」
【七海 千秋/PL2】
「…ふぁ〜い、んぅー、洗面所…? ううう…、んん〜」


『日向クンって面倒見良いんだ。ふふっ、まるでお母さんみたいだね』
「不本意だけどな。このメンツなら仕方ないだろ」
苗木に茶化されると、日向は照れ隠しに咳払いを1つした。実際自分達が今のような状況に置かれてたら、こんな感じでやりとりしていただろう。まさかクトゥルフ神話TRPGのセッションで幼馴染のロールプレイをするとは思わなかった。
3人起きたら、みんなで朝食を食べて、出掛けよう。目的もなく何も分からなかった昨日とは違う。今日は狛枝を診察するため病院へ行き、その後に小泉の自宅を訪ねるという予定だ。
『朝ご飯を作るということは、日向クンはキッチンだね。じゃあ七海さんはリビングで、これから洗面所で顔を洗いに行くと…』
苗木は『ふむふむ』と言いながら、2人の位置関係をモニタの見取り図に反映させる。何度か時計を見る素振りを見せた後、ロールプレイに合わせて、ナレーションをしていく。


【苗木 誠/GM】
『身の引き締まる冷たい空気が窓から入ってきています。日向 創はキッチンで3人分の朝食を作り、七海 千秋はその間に顔を洗いに行こうと、布団から抜け出しました。狛枝 凪斗はまだ寝室から出てきません』


まだ寝ているのか、部屋で何かしてるのか。昨日は涎を垂れ流していたし、ベッドに涎で世界地図を作っているかもしれない。何にしろ、七海に狛枝を起こすように頼んだから、すぐに顔を見ることになるだろう。日向は特に心配もせず、七海のロールプレイを見守る。するとここで苗木が予想外のことを口にした。
『それじゃ七海さん、<聞き耳>ロールお願いします』
「…え?」
GMからの強制ロール…。日向は苗木の提言にギクリとする。悪い予感しかしないと七海は言っていた。その彼女の言う通り、以前強制ロールがあった際には望まない結末を迎えてしまった。これは何に対してのロールなのか。ただ1つ空いている図書館の空席に、日向は思わず目をやった。七海も同じなのか、苗木の表情を探りながらも白と黒のダイスを手に取る。

<聞き耳>
探索者名  技能   出目  判定
七海 千秋 (55) → 46  [成功]


【苗木 誠/GM】
『七海 千秋は洗面所に行こうとする途中、どこかの部屋からガラスが割れるような衝撃音を聞きました』
【七海 千秋/PL2】
「? …今の音、空耳……、じゃないよね? うーん、どこからだろう」


「GM、音が聞こえた場所は正確には分からない?」
『そうだね。ピンポイントでは分からない。ただ探偵事務所の中、2階のどこかだろうことは分かるよ』
2階のどこか。そう言われて、七海はしばし考え込む。日向の頭の中にはもう1ヶ所しか思い浮かばなかった。自分がいるはずのキッチンの近くには壁を隔てて、洗面所とシャワールームがある。そこから1番遠い場所、リビングから出てすぐの扉は狛枝の寝室だ。玄関口の近くにはトイレもあるが、そこからガラスの割れる音がしたとは考えにくかった。
「………。狛枝くんの寝室に行くよ」
長い沈黙の後に、七海はそう告げた。きっと日向と同じ考えに至ったのだろう。沈痛な面持ちを崩さない。苗木はその答えに頷き、『それじゃ、』とシナリオを進めようとする。しかしその言葉を遮るように、七海が「GM」とハッキリとした声を上げた。
「…ううん、ちょっと待って。やっぱりキッチンに日向くんを呼びに行こうかな」
「七海…」
「ごめんね、意気地なしで。でも私、誰かが傍にいないと…」
長い睫毛を揺らして、七海はカーディガンのフードを被った。下を向く彼女の瞳は涙で潤んでいるのか、キラキラと綺麗に光っている。日向は優しく静かな声で、「七海」と呼び掛ける。ハッとした七海は日向を真正面から見つめた。
「大丈夫だ。七海は意気地なしなんかじゃないぞ。俺も…、1人より2人の方が良いと思う。クトゥルフ神話TRPGなんだから、慎重過ぎるくらいで十分だ」
「うん…!」
七海が微笑むだけで、周りの空気が華やいだように柔らかいものへと変わる。彼女には悲しい顔より笑顔の方が似合っている。
「という訳だ、GM。俺と七海は狛枝の寝室へ向かう」
『了解』


【苗木 誠/GM】
『音が気になった七海 千秋は日向 創の元へ向かいます。音が聞こえた旨を伝えると、日向 創はどこからそれが聞こえたか考えました。2人は1番可能性がありそうな、狛枝 凪斗の寝室へ向かいます』
【日向 創/PL1】
「狛枝、起きてるか? ガラスが割れる音がしたんだけどお前の部屋か?」
【苗木 誠/GM】
『寝室からは返事がしません。シンと静まり返り、物音1つしませんでした』


「GM、<聞き耳>ロールをするよ! 何か聞こえるかもしれないし」
苗木は七海の言葉を受けて、ロールを促す。日向もとりあえず振ってみることにした。ポイントを割り振っていないので、失敗する可能性は高かったが、何をしないよりはマシだろう。

<聞き耳>
探索者名  技能   出目  判定
日向 創_ (25) → 27  [失敗]
七海 千秋 (55) → 73  [失敗]

「あー、おしいな。まぁでも失敗は失敗か…」
『残念。失敗したので、2人には何も聞こえませんでした』
「仕方ない。ドアを開けるぞ」
日向の視線に、七海は黙って頷いた。真っ暗になったモニタからは、ギィ…とゆっくり扉を開ける音が聞こえた。苗木の言葉に合わせて、モニタは画像を映し出したり音を鳴らしたりと、シーンの再現に一役買っている。今回もそうだ。日向は固唾を飲んで、パタン…と閉じる扉の音を聞いていた。
「……? 部屋の中、真っ暗なのか? GM、電気のスイッチを点けるぞ。<目星>した方がいいか?」
『ううん。部屋は暗いけど、大体スイッチってドアの近くにあるものだし、自動成功で良いよ』


【苗木 誠/GM】
『日向 創は部屋の入口のすぐ傍に電気のスイッチを見つけました。パチリと音を立て、暗かった部屋が明るくなります』
【?? ??/??】
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」


「うわああああああああああッ!!!」
「っ!!」
日向はイスから飛び上がり、絶叫した。七海も引き攣った声を漏らし、口に両手を当てている。普段感情の起伏があまりない彼女にしては珍しく驚いているようだ。無理もない。パッと暗いモニタに映し出されたそれは人の形をしていたが、人間とは形容しがたいほどの異常性を兼ね備えていた。


【苗木 誠/GM】
『日向 創と七海 千秋の前には、得体の知れない何かがいました。人の姿をしているようですが、その顔は人間とは思えないほどに狂気に満ちて醜やかです。気味の悪いほどの青白い肌。振り乱した髪は肩ほどの長さがあります。カッと見開いた目は何も映しておらず、大きく開いた口からはポタポタと赤い血を滴らせていました』


苗木の言葉通りの存在がモニタに映っていた。薄い色の髪を顔に纏わりつかせ、その隙間から見える灰色の瞳はギョロリと落ち窪み、ギラギラとこちらに禍々しい視線を送っている。頬はげっそりとこけ、何も着ていない上半身はギスギスに痩せ細っていた。ニィと上がった口角からは血の他に、涎が滴っており、日向の胃には思わず嫌悪感が込み上げてきた。
「ちょ…、何だよこいつは!!」
「どういうこと? GM、この化け物は…。ううん、それよりも狛枝くんは…!?」
七海の声に日向はハッと意識を取り戻し、イスに座り直す。そうだ、狛枝は!? 寝室には彼がいたはずだ。そこに化け物が現れたということは…と考え、浮かんだ最悪の結末に日向は頭を振る。
「こ、狛枝は無事か? この化け物にやられちまったんじゃないだろうな!?」
『狛枝クンが無事かどうか…、2人とも<アイデア>ロールをしてみてね』
苗木は静かに告げる。何故ここで<目星>ではなく、<アイデア>を振るのか。日向にはダイスロールの意味が分からなかったが、今考えていても仕方がない。とにかくこれで狛枝の安否が分かるのならばどうでも良かった。白と黒のダイスを掴み、テーブルに放り投げる。

<アイデア>
探索者名  技能   出目  判定
日向 創_ (50) → 54  [失敗]
七海 千秋 (70) → 38  [成功]

失敗…。さっきから良い数字は出ているのに、成功まではいかない。しかし七海は成功している。これで狛枝がどうなったかが分かる。ダイスの目を見た苗木は改めてロールについて解説をする。
『<アイデア>ロールのことは前にも話したね。これは直感力、そして物事を認識するロールだ』
世の中、知らない方が良いこともある。その要素がクトゥルフ神話TRPGには多い。日向はふと以前苗木が言ったことを思い出した。


【苗木 誠/GM】
『七海 千秋はその高い直感力により、気付きます。


目の前の化け物が、狛枝 凪斗、ということに』

【狛枝 凪斗/NPC】
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」
【七海 千秋/PL2】
「そんな…、これが狛枝くん、なの?」


「!? な…っ、嘘、だろ。この化け物が、狛枝…だと?」
日向は絶句した。知りたかった狛枝の安否。だが、その真相に絶望する。モニタに映る狂気がこちらをじっと見ていた。喉が乾いて、ヒリヒリと焼けつく。慟哭が全身を駆け巡り、それ以外の音が遠のく。目の前に火花がチラついて、頭がグラグラと大きく軸をずらす。たった一晩で狛枝がこんなことになるなんて…。茫然自失の日向、深慮思考の七海。苗木は2人の反応をただ受け止めるだけだった。

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